フードの男
投稿者:八尺マン (46)
俺はマンションの警備の仕事をしている
ある日、マンションの一室に一人の高齢男性の入居が決まって、引っ越し屋が来た
荷物を運ぶルートは一階の入り口から貨物用のエレベーターに乗り、該当階に上がって、部屋に行くっていうルートだ
俺は引っ越しの責任者に、エレベーターを動かすための鍵を渡しつつ、ちゃんと通るルートに養生をして、柱とかにキズとかつけないでねと指示をした
俺はまとめなくちゃいけない書類を管理室で作りながら、時々、監視カメラで引っ越しの様子を見ていた
引っ越し業者は全部で5人
皆、テキパキと動いていた
と、途中から、一人だけ妙にゆっくり動く奴が目に付くようになった
他の奴に比べて少し身長の低いフードをかぶった男だ
他の奴は大きな荷物を持ってせっせと動いているが、そいつだけ小さい荷物を持ってゆっくり動いている
さっきはいなかった
応援だろうか
しかし、やる気のない奴だ
俺が引っ越し屋だったら叱り付けてやるな
まあ、でも、俺は引っ越し屋じゃない
俺がとやかく言うことではないのだ
ただ気にはなるので、時々、監視カメラを見てはそのフードの男の動きを追っていた
奴はずっとゆっくりと動いていた
やがて、引っ越し作業が終わった
責任者が鍵を返しに来る
「鍵ありがとうございます。無事、引っ越し完了しました」
「ご苦労様です。引っ越し中にどこかぶつけてないか確認しますので、一緒に確認をお願いできますか?」
俺と責任者は一緒に荷物を運んだルートをチェックしながら歩いた
俺はチェックをしながら、その責任者にフードの男の話を振ってみた
「しかし、監視カメラ見てましたが、一人やる気のない奴がいましたね。ああいうのと一緒に仕事しないといけないってのは大変ですね」
「ん? やる気のない奴・・・ですか?」
「ええ。フードをかぶっていた男ですよ。明らかに動きが悪かったじゃないですか? 持っているのも軽そうなのばかりで」
「フードをかぶった? そんな奴はうちにはいませんよ? 皆、テキパキ動く頼もしい奴ばかりです」
「え・・・。そんなはずは・・・」
俺は管理室に戻り、監視カメラでさっきの映像を再生してみた
「・・・あれ? 映ってない・・・?」
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