同級生を名乗る人
投稿者:舞姫 (16)
この話は、私が見た夢とその後に起きた実話です。
残念ながら、有名な見た夢が現実になったとか、夢予知のように優れた内容ではありません。
ちょっと、不思議だなあ…何で!?という出来事でした。
10年ほど前に、記憶に残る不思議な夢を見ました。
私はぼんやりと夢を見ながら、今自分が夢を見ていることをかすかに自覚していました。
夢と言うにはあまりにも現実的な実在感を感じるものの、内容はとても非現実ながら、その世界では異常でありながらもそこで暮らす人々が受け入れて暮らしているという、いわば並行世界のような感じなのかなと、夢を見ている自分が、その世界の自分と意識だけが重なるようにして行動を眺めていました。
夢の始まりは、現実世界とほぼ同様の景色である自宅近くの交差点に、3人で居ました。
自分と、同じ年頃の職場の同僚である男女ふたりで、男性のほうは、現実では学生時代同級生だった人です。
相手の姿を見て、この世界での自分の年齢が26才くらいであることが分かりました。
この世界では職場の同僚になっているんだ、さほど親しくもなく恋愛感情もなかった人でしたが、何かしらの縁のある人なんだなと、様子を見ていました。
時刻は午後4時半前後、曇りの日の夕方で春半ばといった気候のなか、あたりはやや薄暗くなり始めていました。
現実世界では、のどかな住宅街近くとはいえ交通量の多い国道沿いであり、近辺には商業施設も点在するため、普段なら車や人通りの絶えることがない交差点ですが、夢の中では人っ子一人おらず車すら通っていません。
よく見ると、商業施設の建物が現実とは少し違っていました。
辺りは不自然なほど静まりかえっており、不気味な雰囲気すら漂っています。
夢の中の自分は少し焦っていました。
今日は退職日だったのですが、渡されていた花束を、職場に置いてきてしまっていたのです。
夢の中の私の勤務先は役所で、その役所は現実では交差点近くのスーパーの場所に複合施設として建っており、その上の階にありました。
徒歩でもほんの5、6分の距離なのにもかかわらず、焦るのには大きな理由がありました。
どうしよう…今から取りに戻るとかなり危ないかも知れない。
うろたえる自分の危機感の理由の詳細も、だいたい把握できました。
この夢なのか現実と並行する異世界では、人間の目には霧とも煙とも靄のようにも見える邪悪な存在があり、日が出ているうちは拡散していて問題がないものの、日の光が衰えてくる夕刻から夜にかけて急速に活動始めるようなのです。
しかも、この邪悪な意識体は、生物、特に人間に対して強い殺意を持っており、視覚に入るや否や瞬時に殺害してしまうほどなのです。
それは、体の内部から破裂して血しぶきが飛び散る様な惨殺のため、皆恐怖に怯えてなんとか折り合いをつけながら暮らしているのでした。
その黒っぽい煙のような存在は、閉めた窓ガラスの隙間すら潜り抜けて入ってくるので厄介です。。
たいていの場合、建物内にこもって静かに用心深く過ごしていれば無事にやり過ごすことは可能なのですが、たまに傍若無人な若者などが建物内で騒がしくしていると、安全な場所であっても気に障ると大量殺人が突然起きてしまうこともあるのです。
そういう理由で、薄暗くなるこの時間には皆用心して建物内にこもり始めるため、人気が全くないのでした。
そしてもう一つ、つい最近、これまでずっと安全だと思われていた役所の入っていた複合施設でもそれが起きてしまった直後だったのです。
運悪く退職日の前日か、数日前に起きてしまったため、非常に慌ただしかったのでした。
ちょっと、危ないかなあ…でも、せっかくだから取りに行こう!
この世界でも現実と同姓のT君が、淡々と付き合ってくれるので感謝しました。
この世界でも性格は一緒だな…と感心して歩き出し、十数メートルも行かないうちから、建物の間に見える空にみるみる黒い靄のようなものが集まりはじめ、危険な気配を放ち始めてしまいました。
あと、数十メートルで複合施設の入り口を目の前にして無念…。
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