廃倉庫の白い顔
投稿者:A (4)
そうしていると、やっと住職が重たい口を開いた。
「B君て言ったかな。彼は今元気そうだった?」
「はい。この動画を見て怖がってますが、それ以外は普通です」
住職は頷く。
「C君は昨日眠れた?」
今度はCに問い掛けると、Cは肩を跳ねていた。
「……」
何故か言葉が引っ掛かったように押し黙るCを横目にして、俺は眉を寄せる。
「その動画自体は何の問題はないと思います。ただ…それを見たC君に憑りついてるかもね」
「マジすか?」
住職の言葉にCではなく、俺が食いついた。
未だに幽霊の存在が信じられない俺は、幽霊がCに憑りついたと言う住職の言葉に疑心暗鬼だった。
「うーん、たぶんだけどね。最初はそのB君て子に憑りついていたんだろうけど、他に自分の事を見えている人が現れたからそっちに興味を持ったってのが分かりやすいかな?」
俺がCに何か心当たりがあるのか聞いてみると、何でも昨晩から動画に映る顔が至るところで現れていると話してくれた。
それはまさしくBが言っていたように、窓辺やらテレビの裏なんか日常的な背景に現れるらしい。
Cはまさか本当に自分が?と内心楽観視していたところで実際に見えてしまったものだから、本当に幽霊なのか、それとも自分の妄想なのか自信が無かったらしい。
ただ、Bの一件があるため、もし自分もBと同じ事態に陥っていればBの様に病院送りにされるかもしれないと迫り来る恐怖に怯えていたようだ。
「じゃあ、厄除けしようか。C君、それとA君、君もね」
「俺もですか?」
すると突然、俺も祈祷を受けるように言われたもんだからC以上に驚いてしまった。
俺にはBやCのように変化はないように思うが、もしかして呪いの兆候でも感じ取ったのだろうか。
「ああ、そうじゃないよ。君は何か鈍感ていうのかな。心底幽霊とか信じてないから何も見えないし、これからも霊障とかそういうの無いと思うよ。ただ、君は平気でも陰気なモノが君から周囲へ漏れ出して、その影響を受けちゃったらB君とかC君みたいに周りがああなっちゃうからね」
住職は俺の隣で俯いているCを指して苦笑いする。
と言うか、鈍感て。
俺はそんなに霊現象に鈍いのだろうか。
それから場所を本堂に移して祈祷を体験したが、終わった後は妙な充足感に満ちた身体中が軽くなる気分に陥った。
特にCは清々しい表情を浮かべて背伸びしていた事を見ると、うまく御祓いできたようだ。
「大事なのは気持ちだよ。厄除けを受けたって思えばその体験一つで体か軽くなった印象でしょ。病は気からって言うからね。廃墟巡りもいいけどほどほどに」
住職はそのまま一礼すると笑いながら立ち去るので、俺とCは「ありがとうございました」と深々と頭を下げた。
因みに、奥さんがやってくると代金は要らないからBが退院したら連れてくるように言われ、その後には廃墟は老朽化して危ないから無闇に行くなと軽く怒られた。
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