廃倉庫の白い顔
投稿者:A (4)
「俺もわかんねえよ。ただ、母ちゃんに聞いたら首にタオル巻いて首絞めてて泡吹いてたって。俺がそんなことするわけねえだろ?なあ?」
いや、自殺理由は俺達には分からないが…。
なんて戸惑いつつも、確かに俺が知る限りBは自ら死ぬようなタマじゃない。
つまり、夢の中でそのオバケに首を絞められていたと思ったら、現実では自分でタオルを使い首を絞めていたと言うのか。
「マジでオカルトじゃん」
「…俺もそう思うわ」
俺がそう言うとBの擦りきれた精神状態が窺い知れるように頷いた。
話を終えた俺達は、一先ずBのスマホを借りて退室すると、ロビーで待っていた母親に「Bはネットで見た首回りの凝りの解消の為にタオルを巻いていたが、そのまま寝落ちして今回の事故に至った」と、三人で考えた無茶苦茶な言い訳を話した。
ただ、幸か不幸か、普段から流行りものに飛び付くような地頭の悪いBの素行の積み重ねが祟ったのか、母親は呆れたようにその言い訳を受け入れていた。
「Bはどんだけバカ扱いされてんだよ」
と、Cが俺にだけ聞こえるようにぼやいていたのは秘密だ。
翌日、俺はCと共に近所の寺に訪れた。
と言うのも、スマホでお祓いの類いを検索していた所、近くに寺があることを知り、その勢いで電話したのだ。
年配の女性らしき人と電話越しにBの件をかいつまんで話し、動画を見てお祓い出来ないか相談した所、一先ず現物を見てみたいと言われ足を運んだ次第だ。
境内の離れにある建物へ通されると、雰囲気のある渡り廊下を通って客間に通される。
和洋折衷宛ら、手前にはテーブルと椅子が置かれた洋間、奥手には祭壇らしき座敷がある。
恐らく、俺達を案内してくれた女性が電話を受けた女性だろう。
住職の奥さんだろうか。
暫くすると袈裟姿で坊主頭の年配の男性に付き従うようにして入室してきた。
「あ、あの、昨日お電話した、Aです」
俺とCは思わず立ち上がってお辞儀すると、住職と奥さんは笑って座るようにうながしてくれた。
奥さんがお茶を配膳してくれている間に、住職は柔和な面持ちで本題を切り出す。
「それで、幽霊が映ってるという動画を拝見しても?」
「あ、はい」
俺は緊張した面持ちでBから借りたスマホを取り出して、動画の再生画面を映した状態で差し出した。
住職はスマホを両手で受け取ると、柔和な表情から一転、厳しい目付きで画面を捉え再生していく。
住職が真剣な面持ちで動画を見ていく様子を俺とCは黙って見守るしかない。
奥さんが出してくれたお茶うけにを感謝しながら頂き、住職を見据える。
暫くすると、動画を見終えた住職が大きく背伸びをして溜め息をつき天を見上げる。
スマホを返却すると、住職は腕組みをして渋い顔をして、しばしば俺とCを見やる。
特にCを見ては俯いて溜め息をつくので、Cは妙な汗をかいていた。
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