いつもそこから
投稿者:ぴ (414)
私は一時期、英語の勉強がしたくて英会話教室に通っていたことがありました。
家から遠い場所にあり、通うのは少々億劫でしたが、そこしか英会話教室がなかったため、私は毎回そこまで電車で通っていました。
ただ一つ、ずっと気にかかることがあったのです。英会話教室に行くまでに、建物と建物の間に細い小道みたいなところがありました。人が一人やっと通れそうな細道です。
その突き当りに蓋のついたゴミ箱があるのですが、いつもそこから赤ちゃんの泣き声みたいな声が聞こえてくるのです。
何度通ってもいつもそこからおぎゃあと声がするので、英会話教室で聞いてみたことがありました。
でも「猫か何かじゃないの?」と軽く流されてしまいます。それがとても気がかりでした。
ゴミ箱に赤ちゃんが捨てられているわけがないということは頭では分かるのですが、どうしてもその心配が拭えず、私はその日英会話教室に行く前にその小道に入っていったのです。
ゴミ箱の前まで来て、やはり赤ちゃんの泣き声は目の前のごみ箱の中から聞こえると思いました。
だから思い切ってそれを開けてみようと蓋に手をかけました。
そしたらあれだけ騒がしかった赤ちゃんの泣き声がぴたりと止んだのです。
なんだか不気味で、私はごみ箱を開けるかどうかを躊躇しました。
その一瞬の隙に、後ろから「邪魔だねぇ」としわがれた声をかけられたのです。突然声をかけられ、心臓が止まるかと思いました。
振り向くと後ろに小柄な老婆が立っていました。作業服のような服を着た老婆で、その人は狭い道で私を押しのけてそのゴミ箱の蓋を開けたのです。
「ひぃっ」って悲鳴が漏れました。
だって老婆が開けたごみ箱の中に赤ちゃんの生首が見えたからです。
私が腰を抜かしかけたら、老婆は赤ちゃんの遺体が入ったごみ袋を手慣れたように回収して、そのまま突き当りをすぅっと消えていきました。
私は叫ぶこともできず、声もなく必死でその場から走り去りました。
その日は何も考えられず英会話教室を休んで、家に直帰しました。
今思い出しても、震えが来るくらいの恐怖体験でした。
あの老婆がどこに消えたのかは分かりませんが、生首らしきものが回収された後あの場所で赤ちゃんの泣き声を聞くことは二度となかったです。
そして実はあの小道の向こうに昔は産婦人科があったと聞きました。
ゴミ箱で泣いていた赤ん坊はもしかしたらその場所と関係があったのかもしれません。
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