横浜の某ホテルでの体験
投稿者:マツ (2)
これは結婚前、夫と付き合っていた頃の体験談です。怪談嫌いの夫とはこの出来事について話さないようにしていますが、誰かに聞いてほしく投稿させていただきます。
私と夫はデートで横浜に来ました。山下公園や横浜港をひとしきり散策した後、私たちは中華街まで足を運びました。中華街を歩き回っていると、往路で利用したみなとみらい線の駅からはだいぶ離れて、京浜東北線の方が近くなっていました。都内から来ていた私達は歩き疲れていたこともあり、京浜東北線で帰路につくことにしました。
詳細な経緯は忘れてしまいましたが、駅に向かう過程で地図アプリを見ていて駅の反対側にホテル街があると知ったからなのか、何となくそういった雰囲気になった私たちは電車に乗る前にいわゆる「休憩」をすることになりました。
駅の反対側に建つ綺麗なショッピングビルとは対照的と行って良いほど、そのホテル街は寂れた雰囲気を醸していました。
既に婚約していた私達は付き合いが長く、あまりホテルにこだわる方でも無かったのでなるべく安いところにしようと街を歩いていると夫が「ここが安い」と1軒のホテルの前で足を止めました。
そこは見るからに寂れた感じがしましたが、外観は辛うじて南国風に手入れされているように感じました。しかし、中に入るといかにも昭和のホテルという様子で、窓口で鍵をもらって部屋に行くシステム。そして、そういう事をする場所は多少なりとも独特の空気があると感じていましたが、そこは明らかに陰鬱な感じがして部屋に入る前に気が引けてしまいました。
部屋もやはりというか想像以上に年季が入っており、すでに気が滅入っていましたが、それでも入ってしまったのだからと致す流れに。
先にシャワーを浴びようと浴室に入ろうとするもタイル敷きの浴室は何とも言えず気持ち悪く、超特急でシャワーを済ませましたが、そこからが恐怖の連続でした。
いざ事が始めようとすると、窓の外で銃声のような音や「キャアアアアアアア」という女性の激しい悲鳴、パトカーのサイレンまで聴こえ私たちは気が気でなく外を確認するも外は何事も無い様子。気味が悪くなり早々に退散することにしました。
嫌な気分でホテルのフロントに辿り着くと、ロビーに少女向けアニメのキャラクターものの玩具と思しき音声が繰り返し何度も響き渡ったのです。
その場に似つかわしくない音に心底怖くなり足早にホテルを出ようとすると、エントランス横にセミロングのウェーブヘアにブラウス、タイトスカートといった出で立ちの中年女性と5〜7歳ぐらいのロングヘアにノースリーブのワンピースを着た女の子が俯いて腰掛けていたのです。女の子はロビーに響いていた音の元と思われるアニメの玩具を膝に置き、しきりにボタンを押しているようでした。
「こんな場所に子連れ?しかも中に入るでもなく入口横で何をしているの?」という疑問が頭を過ぎりました。しかも彼女たちの風貌は4月にしては薄着で、何となく昭和というか例えるなら「サ○エさん」に出てきそうなファッションでした。彼女たちだけがセピアがかって見えた気がし、直視してはいけないと感じて、すぐに視線を逸らしてそそくさとその場を去りました。
「何かあのホテルおかしかったよね?」
しばらく歩き、ホテルから離れたところでようやく夫に尋ねました。ところが夫も部屋での音は聞いたと言いますが、ロビーでの玩具の音や母娘と思しき2人が入口横にいた事は気付かなかったと言います。
「あんなに大きい音で玩具の音が響いていたのに?」と信じられませんでしたが、違和感だらけの出来事に、この世のものでは無いものを見てしまったのだと思い、この日の事は口に出さないことにしました。
その後、すぐに入籍し同居を始めた私達は敢えてホテルに行くことも無くなりましたが、彼女たちは今もあのホテルの入り口に佇んでいるのかも知れません。
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