宛先のない手紙
投稿者:ぴ (414)
そして送り主の住所と名前を書いて、ポストに投函しました。
なぜだか深くは何も考えずに、ひたすら幸子ちゃんへの謝罪の気持ちが湧き出してきました。
しかし、私が出した手紙は幸子ちゃんに届くことはなく、数日後に返却されました。
どうしてだか分からなくて、郵便局で確認してみました。
すると、郵便局の職員さんに住所が間違っていて送れないみたいなことを注意されたのです。
どうやら住所が違っているみたいでした。
私はせっかく書いた手紙なのにと、手紙を持ったままなんだか途方にくれました。
その日の夕方辺りだったでしょうか。
久しぶりに小学校の友達から連絡が来て、お互いに近況報告し合ったのです。
友達は仕事が楽しいみたいで、大変充実した毎日を送っているようでした。
そればかりか来年彼氏と籍を入れる予定といっていて、とても幸せそう。
仕事もプライベートも順風満帆そうで、つい僻んでしまいそうになりました。
あまりに幸せな話しかしないので、私はふと幸子ちゃんの話を振ってみたのです。
「幸子ちゃんって覚えてる?」と手紙の話をしたのですが、同じ小学校に通っていたはずのその子は「誰?」と私に聞き返してきたのです。
確かにただのクラスメイトで話したことはほぼないけど、あんなに浮いていた子だったのに覚えていないとは思わなかったです。
あまりに可哀そうなので、いろいろと説明してみたけど、それでも友達はまったく思い出さなかったです。
なんだか納得いかないまま、私は友達との電話を切りました。
通話を終えると小さな胸騒ぎがして、小学校の頃のアルバムを開いてみました。
そして順番に探していったけど、幸子ちゃんの写真は卒業アルバムに載っていませんでした。
これを確認したら、自分の記憶があやふやに感じました。
「あれ、幸子ちゃんって本当にいたっけ?」と自分でも分からなくなってしまいました。
私は送り主の幸子ちゃんの住所を自力で探してみたのですが、住所の場所には住宅地はありませんでした。
そして怖かったのは、近くに墓地があったことです。
そこは個人墓地のようで確認したら、確かに「細木」と書いてありました。
これを見たときの衝撃は想像よりはるかに上で、背筋が震え出します。
細木幸子はおそらく実在する人物なのだと思います。
ただ私の記憶が自分が本当に体験した記憶なのか分からないと思いました。
あの手紙には送り主だけで、私の住所や名前は書いてありませんでした。
そして私の友人は誰も細木幸子を知りません。
だからもしかしたら別人に宛てた手紙が、何らかの間違いで私のもとにやってきたのかもしれないと思っています。
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