なんとおじさんは週末泊り掛けで心霊現象の調査に来ると言うのだ。
まあ、私としては一人で心細く、且つすぐに引っ越すような宛もないので大いに助かるが、一週間弱一人で過ごすという現実も重く圧し掛かってきた。
おじさんとの約束の日まで、やはり心霊現象は続いた。
決まって時間は夜以降で、特に寝落ちした時や洗顔時に多く声が聞こえてくる。
ただ、あれ以降は生活空間の電気は常に点けっぱなしにするといった投げやりの対策をしているので、あの時の物体を目撃する事が無かったのは幸いだ。
約束の日、私が仕事から帰ると電話が入り、出るとおじさんが今から家に来ると知らせてきた。
仕事帰りに酒や肴を買って来たので食糧は問題ないが、おじさんは何処で寝るつもりなんだろうかと、小さな疑問を抱きながら到着を待った。
暫く待っているとチャイムが鳴りおじさんが到着した。
「いやあ、ごめんね。泊まる事にして」
「いえいえ、こちらこそ変な事言い出してすみません」
儀礼的な挨拶を終えると、おじさんを居間に通してこれまでの現象を事細かに報告する。
その際、おじさんは相槌を交えながら私が声を聞いた場所や謎の物体を目撃した場所を手帳に書き取り、さっそく家宅捜索を始めた。
先ずはよく鳴き声が聞こえる廊下を大人二人で点検する。
床の軋みはあるが猫のような鳴き声はしないので原因は床ではない。
まさか床下に猫が住み着いているのかと思ったおじさんが、靴に履き替えて外に出ると、懐中電灯を照らして床下を覗き込むもそれらしい動物の影はなかった。
壁の劣化具合と隙間風の通り抜ける音が原因かと思い、風呂場に向かうが、当然建付けが悪くなったからといってそんな音は鳴らないだろう。
最後に洗面所にやってきて、本件の主役でもある謎の物体の正体について考える。
「鳴き声はもしかして動物が住み着いてるんじゃないかと踏んだんだが、この謎の物体となるとなぁ……」
おじさんは手帳に刻まれたメモ書きを指でなぞり、怪訝な表情を浮かべる。
「野良が入ってきたとかじゃなくて?」
「いえ、玄関は閉めてましたし、そもそも猫とか狸には見えなかったです」
四足歩行という点は確証が持てるのだが、どうしても靄がかかった部分が分からず何の動物が近いか喩えが出てこなかった。
そう、猫や犬のような動物ではなく、もっとこう身近な生き物のシルエット。
「んー、まあ寒いし一端居間に戻ろうか。のんびりしてればその変な鳴き声が聞こえてくるかもしれないし」
「わかりました」
私はおじさんを居間に案内して、用意していた酒や肴をテーブルとしても活用しているコタツ机の上に広げる。
私の見立て通り、おじさんはかなりの酒好きなのか無邪気に笑顔を浮かべて「やった!」と喜んでいた。
最近のスーパーはどんな出来合い物も美味しい。
そんな事を言いながら他愛もない会話を交わし、私達はすっかり目的も忘れてささやかな宴会気分のままいつの間にか寝入っていた。
暗がりの中、テレビだけが煌々と灯っており、コタツに入ったまま仰向けに鼾をかいて寝ているおじさんが見えた。
私はコタツから這い出ると尿意のせいか体が震え、トイレに向かう。
いや怖いよ
面白かった!
この投稿者さんの名前って…
気になって翻訳しちゃいました
インドネシア語で呪いみたいな意味があるようですね
怖い…
バイオハザードヴィレッジ(バイオ8)のベネヴィエント邸に出てくる赤ちゃんを想像してしまった…