当時、はっきりと見えなかった存在をルームミラー越しとは言えくっきりと肉眼で捉えてしまった俺は、過度の恐怖から喉が干上がったように掠れ、ルームミラーから震える手を慎重に離す。
目を逸らし、暫く息を整えた俺は、心の中で「1、2、3」と何度も数字を反復し、覚悟の決まったタイミングで運転席から外へと飛び出した。
整地された地面に転がり出た俺は、そのまま自宅に駆け込むなり「やっぱ予定あるから買い物かわって!」と母に半泣きで訴えかけ、あまりに必死に頼み込む俺を冷ややかに見つめた母は渋々買い物を引き受けてくれた。
母が電動自転車で出かけたのを見送った後、俺は自室の窓越しに車へと視線を移す。
どうしてなのか分からないが、あの髪の長い女は未だ後部座席に座っているようだ。
それから俺は車に乗る事ができなくなった。
正確には俺の軽自動車限定だが。
自転車や友人の車に乗ってもあの女は現れないのだが、俺が自分の車に乗った時だけあの女が現れる事がわかったからだ。
理由は分からない。
ただ、AとBが事故った時に同乗していた女と同一人物ならば、もしかしたら女の次の標的が俺だということだろう。
どうしたら女が居なくなるのか誰か教えて欲しい所だが、今のところ、交通機関は電車や原付バイクで間に合っている為、あの軽自動車は売ってしまおうと思う。
それであの女が俺を諦めてくれる保証はないが、その時はその時だ。
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