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不思議体験

ぴさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

刺すような視線の先
長編 2022/05/09 23:41 2,249view

私はごく平凡な容姿だと思うのですが、昔から変な人にモテました。

別段、男性に優しくしているわけでもなければ、守ってあげなきゃみたいな弱そうなタイプでもないと思います。

だけど、変わった人に必要以上にモテてしまって、ストーカーのような被害に合ったことは一度や二度ではありません。

だから今回のことも、そのような人に付け狙われているのかと最初は思っていたのです。

一番最初にその人の存在に気付いたのは、よく乗る電車に乗り合わせたことでした。

職場に行くために乗った電車に必ずといっていいほど同じ人を見かけたのです。

どんより暗い感じのオーラを放ち、深めに帽子を被っている人で、いつも刺すような視線を私の周りに向けていて、幾度となくいろんな経験をしてきた私には要注意人物に見えました。

これまでの経験上、ろくなことをしないタイプの人だと思って、私はだんだんと警戒するようになっていったのです。

ただ、同じ電車によく乗り合わせるという理由だけで、相手をストーカー扱いするわけにもいきません。

しばらくは気持ち悪いと思いつつも、我慢して気づかれないようにちらちらと様子を伺っていました。

しかし、様子を見ている内にあることに気づいたのです。

この人がいつも見ているのは私ではなく、いつもその周辺でした。

最初は周りの人をけん制でもしているつもりかと思ったのですが、よく観察していると刺すような視線の先には、いつも同じ人がいたのです。

相手にストーカーの疑いを持った私だからこそ気づいたことだったと思うのですが、彼が見ている人はいつも同じ人でした。

40代くらいのサラリーマンみたいなスーツ姿の男性が乗っており、その人にずっと刺すような視線を向けているのです。

私はそれに気が付いてしまいました。気づいたときは、恥ずかしさでいっぱいになりました。

だって自分に気があるストーカーと思い込んでいた人物はまったくの勘違いで、実は自分じゃない人を見ていることに気づいたからです。本当に穴があったら入りたいと思うくらい羞恥心が沸きました。

しかし、それからもなんだかこの二人のことが気になって、電車に乗るたびに気づいたらそっちを観察するようになっていました。

初めはどんな関係なのか興味を持って観察していましたが、その人がサラリーマンを見つめる目があまりにもきつくて、まるで憎しみで突き刺すような視線だと思いました。

しかも、こんなに熱烈に刺すような視線を向けられているのに、いつも見られているサラリーマンの男性はまったく気づく気配がないのです。

その人をちらりとも見たことはなかったし、気にするそぶりがまったく見られませんでした。

こんなに穴が開くほど見られたら、普通なら少しは気づくと思うのです。ぜんぜん気づかなくて、その鈍さが羨ましいくらいでした。

そんないつもの朝に、私が駅にたどり着くと私の前の前にあのサラリーマンが並んでいました。

もうすっかり顔を覚えてしまった見ず知らずの人を見て、私は「あの人だ」と思いました。

ちらっとあのストーカーのような男を探してみたら、私のすぐ斜め後ろにいてドキッとしました。

その人はいつにも増して、鋭い視線でその人のことを突き刺すように見ていました。

私はそれを見て、今日はまた一段と気合が違うななんて軽く考えていたのです。

そして電車がそろそろやってきそうだなと思ったときに、後ろにいたその人は急に駆け出しました。

私は隣を走っていく彼にぎょっとした視線を向けました。

本当に一瞬だったのですが、彼はサラリーマンの背中を思いっきり突き飛ばしました。

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コメント(1)
  • 全然もてないより、ましですよ。

    2023/05/18/07:30

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