怖い動画

Aはメク〇かよ、と思った矢先にあることに気づく。さっきと女の映り込み具合が違うのだ。
その瞬間凍り付いた。本当に動けなくなることってあるんだな。
スマホに反射する自分の顔がその女だったんだよ。無表情でこちらを見つめている。
何を言うわけでもなくただ一点を見ている感じ。ただ目が真っ黒というか白目の部分が見えなかったのは今でも鮮明に覚えている。

スマホを投げ捨てて部屋から飛び出そうとしたけど、あまりに怖くてそれもできなかった。
だって自分の後ろに誰かいるような気がしたしさ。動けば殺られるじゃないけど、本当に恐怖で動けなかったよ。一瞬視線を外したら、スマホに反射する顔は自分になっていた。気配も消えていた。

ＡとＢはそのことについて「嘘くせー」と笑っていたが、Ｃは動画の廊下の奥で音がしたところで「あああああ」とうめき声のようなものが聞こえたといっていた。怖くなってすぐに消したから一度しか確認してないけど、と言っていたっけ。
Ａがまだ保存してあるから送るでｗと悪ふざけしていたが、俺らから早く消さないと呪われるでｗとあしらわれた。

その動画のせいかAはたびたび不幸な目にあった。
便座を出し忘れてケツを強打したとか、自転車が盗難にあったとか、パチンコで10万まけたとか、呪いにしては可愛いものばかりだった。Aも「呪いバッチコーイ！」とふざけていたっけ。

そんなAは夏休み終わり間際に行方不明になった。地元の友達にキャンプに誘われ、行った先で行方不明になったらしい。変わった様子もなく、酒を飲んでバーベキューしていたときに「おしっこしてくるわ」と立ちションをしに席を離れたそうだ。
帰ってこない友人たちが心配になり探したが見つからず警察に連絡。川の付近だったことから酔って流されたのでは？と結構大規模な捜索がされた。川とは逆方向に消えたことから拉致等の事件の可能性も考えられたそうだが、トラブルとは無縁のような男だったので事件性はないと判断されたらしい。

後日、Aの母親に会う機会がありAの実家に俺ら3人はお邪魔させていただいた。
憔悴しきった様子だったが、俺たち3人の名前は良く聞いていたと、仲良くしてくれたことに感謝していると言ってもらえた。ふとAのスマホが充電されているのをBが気が付いて、そのことに触れるとスマホを置いたまま忽然と消えたそうだ。

手掛かりになるようなものはないかしら？とAのスマホを見せてもらう俺たち。
メッセージのやり取りは俺らがほとんどで、知らないのはAの地元の連中？と思われる人だけだった。(Aの母親曰く高校の友達らしい)
何気なくアルバムを開くと例の動画が残っていた。それを見た瞬間、俺ら3人は凍り付いた。原因は多分･･･いや限りなくこれだと直感的に感じたからだ。

母親が洗濯物を入れると席を立ったその隙に再生した。
前に見たものと一緒だったが、一つだけ違う点があった。それはAが転んだ瞬間、女の声で「見つけた」と低い声が入っていること。
母親にはそのことについて何も伝えていない。