呼び出された彼女は不安からか、相手の男の携帯に何度も電話を掛けるが、一向に連絡がつかない。
諦めてアパートに戻ってみると、ベッドの上で血まみれになっている意識のない僕を発見。
泣いて取り乱しながらも119番通報をして救急車に乗り込み、病院へと付き添ったそうだ。
病院に着いた時にはすでに心肺は停止していたらしく、かなり危険な状態で、助かる見込みはほとんどなかったという。
そんな状態から、救急隊や医師たちの必死の救命措置で奇跡的に息を吹き返したそうだ。
しかし脳に血液が回らなかった時間が長かったせいか、その後6年間僕の意識が戻ることはなかった。
刑事たちの話す言葉は、とてもゆっくりとした丁寧な口調ではあったが、その目にははっきりと憐みが浮かんでいた。
その話し方はまるで、小さな子供におとぎ話を読んで聞かせるように落ち着いたものだったが、僕にはまるで理解が出来なかった。
そして、覚えている限りでいいから事件当日のことを話してほしいと付け加えた。
捕まった犯人はすでに刑務所にて服役しているが、取り調べから一貫して無罪を主張していたこと。
被害者である僕が、何度も滅多刺しにされているにも係わらず、手や腕に一切の抵抗の跡がないこと。
普段から僕が仕事で留守の時に、何度もアパートに犯人を連れ込んでいたおかげで、部屋中に男の指紋はたくさんあったが
シンクで発見された凶器とみられる包丁には、僕の血液が付着していて洗い流した跡は全くないのに、犯人の指紋どころかDNA、
手袋などを使用した形跡が全く見られなかったことなどを聞かされた。
話を聞きながら僕の頭は混乱に混乱を極めた。
僕の記憶とまるで違う。
彼女が浮気?
そういえば意識を取り戻してから、一度も彼女に会っていない。
胸の傷を指でなぞりながら、僕は自分の記憶に残っていることをありのままに話した。
明らかに刑事たちは落胆した顔だった。
自分が自分を殺しにやってくるなんて、事件の後遺症から悪い夢をみてたのだろう。
何度も繰り返される同じ質問に、何度も同じ答えを繰り返す。
陽が落ちかける頃、まるで無駄足だったと、あからさまに不機嫌な態度を隠す様子もなく二人は病室をあとにした。

























素晴らしい❗
おいおいおい・・・
ためはち