僕の地獄と彼女の地獄
投稿者:sammy (1)
見たこともない風景と乾いた空気に、そこが病室と認識するまでかなりの時間がかかった。
自分が病院のベッドの上にいると気付いて、直ぐにナースコールに手を伸ばす。
思うように動かない体よりも、伸ばした腕が枯れ枝のように細くなっていたことに目を疑った。
混乱する思考を必死に束ねて、叫びだしたい衝動を必死に抑えた。
返事のないナースコールを連打する僕の指はゴツゴツと骨ばって、まるで他人の指だった。
「…もしもし?」
十数回のコールで返ってきた看護師の声には、緊張と恐怖がはっきりと見て取れた。
「手が!僕の手が!!」
限界だった。
暗い部屋に独り、自分の体に起こっている尋常ならざる事態に動転し、僕はほとんど泣きながら叫んでいた。
そうすることでほんの少しだけ、現実から目を逸らしたり、問題を先送り出来るような気がしていた。
「××さん!?××さんですか!?
目を覚まされたんですか!?」
同じことを繰り返し叫ぶ僕に、僕と同じくらい動揺した看護師の女性は、
直ぐに行きますから!と叫んで若い男性の医師を同伴して、雷雨のような足音を鳴らしてやってきた。
どれくらいそうしていただろう…?
明かりの点いた部屋の中でパニックを起こしていた僕に、大丈夫…大丈夫だからね…
まるで赤ん坊をあやすように背中を摩る看護師の声が、意識に寄り添い、心地良さを感じ始めた頃
親や兄弟、その他の親族が真夜中の病室に集まっていた。
素晴らしい❗
おいおいおい・・・
ためはち