ドッキリの真犯人
投稿者:赤壁二世 (13)
俺はカツラをとって近よりネタばらしすると、今度編集してラインで送ってやると笑ってやった。
さて、次の標的はTだ。
Tもバイトをしているが、奴は自転車通勤の為、タイミング次第では反応を見ることもなく通り過ぎていく可能性がある。
何処でどうやって驚かそうかと悩んでいるとFから「俺もTのドッキリまぜて」とラインが来たので、俺の時のように前後から登場して逃げ場を封鎖することにした。
時間はバイト上がりの23時、場所は墓苑の脇道。
特に墓苑という雰囲気作りに最適な場所があったことで俺とFはやる気に満ちていた。
よくぞ墓苑の近くを通る習慣をつけてくれたと、Tを誉めたいほどだ。
決行日、俺とFは自前の貞子衣装に着替えてそれぞれ墓苑周りの死角にスタンバイする。
時間的にそろそろTがやってくるはずだ。
俺は恐らくTが通るであろう道を見張りながら、その時をまだかまだかと待ちわびていると、予定通りTがやってきた。
ふらふらと蛇行運転しており、ライトが首を降っているのがわかる。
そして、スマホを見ながら運転しているのか、Tの青白い顔がぼんやりと浮かんでいた。
ながら運転とは許しておけない。
俺は制裁の意味も込めて全力で驚かせて腰を抜かせてやろうと意気込み、Tが僅か十メートルほどに迫ったところで死角から飛び出る。
「うあ…ぁあっ…あ…」
ゾンビのように掠れた呻き声を上げ、俺は貞子のようなパントマイムを演じる。
俺の渾身の演技に圧倒されたTは、
「おおっ!?うおっ!おおおお!」
と、当然だが情けない悲鳴を上げながらスマホを落とすと、自転車のハンドル操作を制御できずに墓苑の塀に吸い寄せられるようにやんわりと接触した。
Tはそのまま自転車を乗り捨てると、俺の方を三度くらい見ながら逆方向に逃げていく。
しかし、甘い。
そっちにはFが待機しているのだ。
「うおおおっ!?」
そう思っていると期待通りTの悲鳴が上がったので、俺も追い込みをかけるべくTを追いかけた。
少し進むとTが後退りするように後ろに踵を引いていて、Tの視線上、ちょうど墓苑の入口が広がり墓がちらほら見える辺りに白いワンピース姿の人影がぼんやりと目立っており、その人影が首を直角に曲げながらTの方へ近づいているのが見えた。
さすがFだ。
主演は俺だが、助演男優賞を授けたいほど完璧な動きだ。
Tはすかさず振り返って逃げようとするが、当然振り返ると俺がいるわけで、
「うわっ!ちょ、ま!」
と、パニックになっていた。
ドッキリの仕掛け人を覆う......
こわ…
好き