ドッキリの真犯人
投稿者:赤壁二世 (13)
俺はまんまとドッキリに引っ掛かった気恥ずかしさと、この二人のしたり顔がムカついたので動画のアップロードを固く禁じるよう言いつけた。
さすがに俺が肘を擦り剝いたと不機嫌に言った手前、FとTは強く出ることができずに引き下がる。
まあ、俺が河川敷をひっくり返りながら転がり落ちるといったアクシデントがあったから、どのみち御蔵入りだろう。
「ちぇ、途中まではマジで傑作だったんだけどな」
「ひぃぃって言ってたしな」
「うるせえ」
それから俺達は河川敷を這い上がり、ポツンと取り残された原付の元へと戻った。
因みに、FとTの衣装は古着屋で購入したものにハサミを入れてダメージ加工し、カツラとカメラは某ショッピングサイトで安いものをポチったそうだ。
血糊のようなものは絵の具を塗りたくったとか。
よくよく見れば、夜道でこんなぶっ飛んだ格好をした貞子もどきに前後を挟まれたら泣き出しても不思議ではない。
「俺ってまだビビり側じゃないよな?」
「いや、充分ビビりだろ」
残念ながら二人の評価では俺はビビりのようだが。
そんなことがあった凡そ翌月くらいだろうか。
俺はリベンジの為に近くの某オタクショップでカツラと白地のワンピースを買い、貞子宛らの衣装を買い揃えた。
俺はあの日以来密かに練習に練習を重ねて、貞子らしい這いずり方、貞子らしい立ち上がり方、貞子らしいカクカクした動きをマスターしていた。
全ては俺にドッキリを仕掛けたFとTを同じ目に遭わせて羞恥心というものを心に刻み込むための努力と執念の賜物だろう。
自分の情けない悲鳴を録画されて、その後動画越しに自分の醜態を見せつけられる屈辱を味わうといい。
FとTの記憶からドッキリの事が消えているだろうと判断した、ある日。
俺は二人にドッキリ返しを仕掛ける事を決行する。
時間は夜、場所は人通りの少ない所がよい。
先ずはFを標的にして、Fがバイト帰りに通るであろう路地にて準備を始める。
俺は貞子衣装に着替えて、Fが来るのを待っていると、何も知らないFがスマホをいじりながら近づいてくるのが見えたので、込み上げる笑いを抑えつつ路地の角に隠れた。
しかし、夜道でスマホをいじっていると青白い顔が浮遊しているみたいで逆にこっちが怖くなってくる。
Fが角付近に差し掛かった時、俺は勢い良く飛び出して操り人形宛らのパントマイムを披露しながらFに近づく。
「うおおおっ!?えっ!?」
Fは盛大に悲鳴を上げると、持っていたスマホを落としそうになり、手のひらから逃げ出す泥鰌を掴まえるみたいに何度も空気をかすめ取っていた。
運良くスマホが地面と接触寸前で掴み取る事ができ、Fはそのまま逃げるように立ち去るが、途中何度も俺をチラチラ確認していて、何かを思い出したかのうに立ち止まると、
「うわ、もしかして○○か!」
と、かつて俺にやったドッキリをそのままやり返された事に気付いて悔しそうにしていた。
ドッキリの仕掛け人を覆う......
こわ…
好き