行きはよいよい帰りは怖い
投稿者:ぴ (414)
そして「うわぁー」と言ったのです。
声にびっくりした私とサナちゃんが駆け付けました。
そしてびっくりしました。
だって今まで気づかなかったのに、木の後ろにはびっしりと見たこともない真っ赤な花が咲き乱れていたからです。
その花は両端に咲き乱れ、道のようなものができていました。
私はあまりに現実離れした光景に、思わず息を吞みました。
しばらくその光景を見て、サナちゃんが「綺麗」と呟きました。
そして健太は「行ってみよう」と言い出して、その道を突き進むことになったのです。
私はすごく嫌でした。もし二人がいなかったら、そぐにその場を離れてしまうだろうくらいにその道の向こうに行きたくありませんでした。
しかし二人がどうしてもというので、仕方なく着いていくことにしたのです。
あのとき、もし私が二人と強く引き止めていたら、もしかしたら何か変わっていたかもしれません。
しかし、当時の私にはそのような固い意志がなかったのです。
私と健太とサナちゃんはその道を歩いていきました。
途中で健太が通りゃんせの歌を歌い始めて、より不安感が増しました。思わず、「その歌歌わないでよ」と言ったと思います。
でも健太は止めずに歌い続けました。
それに加わって、途中からサナちゃんまで歌い始めてびっくりしました。
二人とも心なしが目が虚ろで、ちょっと心配になりました。
本当にその道を行くときは、ただ真っ赤な花が美しい幻想的な光景でした。
しかし5分くらい歩いても先に辿り着きません。
10分くらい歩いたところでしょうか。
だんだん周囲が薄暗くなってきたのに気付いた私が、「そろそろ帰ろう」と前を歩く二人を呼び止めたのでした。
最初は渋っていた二人でしたが、「お父さんに怒られるよ」というと、二人ははっとしたように見えました。
そして来た道を帰り始めたのです。
帰る途中でおかしなことが起こりました。
「通りゃんせ通りゃんせ、ここはどこの細道じゃ」とまた歌いだしたのです。
だから私は「もうやめて」と後ろの二人を振り返りました。
でも二人は「え?」という不審な顔をしているのです。
そして「歌ってない」と言いました。
耳を澄ましてよくよく聞くと、不気味なことにそれは花のほうから聞こえます。
私は花をじっと見たら、花の真ん中が少し動いているように見えました。
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