行きはよいよい帰りは怖い
投稿者:ぴ (414)
思わず顔を近づけてみて、私は次の瞬間真っ青になりました。
だって歌はその花の中心から聞こえてきて、よく見ると花の中心の普通なら花粉のある場所に、人の顔のようなものが浮き出ていたからです。
私がそれに気づいた瞬間、その顔は歌を歌うのをやめ、急に泣き出しました。
その顔が「助けて~、逃げろ~」と言うのです。
私はぞっとしました。健太がおもわず、その花を引きちぎりました。
多分健太も怖かったのだと思うのです。
そしたら花が痛みを訴えるような高い声をあげました。
「ひゃぁ」っとサナちゃんの悲鳴が聞こえました。
「逃げろ」と健太が言ったんだと思います。
その声を聴いた瞬間に私たちはこの道を走り出しました。
私は行くときに一番最後尾だったので、帰りは一番来た道に近くて一目散に逃げました。
後ろの様子を伺う余裕すらなかったです。
後ろで健太が慌てる声とサナちゃんの悲鳴が聞こえました。
でも私は一度も振り向かず、足を止めなかったです。
だから元の木の場所まで辿り着いて、息を切らして後ろを振り向いたときに二人がいないことに気づいて、さっと青ざめました。
私には二人の幼馴染がいたはずです。
健太とサナちゃん、二人のことを今もはっきりと覚えています。
なのに、あの日泣きながら私が二人がいなくなったことを両親たちに訴えたら、そんな子最初からいないと言われました。
健太の両親もサナちゃんの両親も実在するのに、そんな子供知らないと言われてしまったのです。
今思うとあの場所は絶対に立ち寄ってはいけない場所だったと思います。
そして、私だけ逃げ帰ってしまったけど、その後二人はどうなったのかと考えるとぞっとしてしまいます。
咲き乱れた花はすべてに人の顔があるのではないかと思うのです。
そして、あの場所に迷い込んで戻ってこなかった人たちはあのまま花になってしまうのかもしれないと思うと、鳥肌が止まりません。
あのとき、私が引き留めて入れば、あのとき私が振り返っていれば未来は変わっていたかもしれません。
そう思う度に罪悪感に吞まれそうになります。
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