バックミラーに消える人影
投稿者:FBS (19)
あれはもう十年以上前になるだろうか。
年が明けてすぐの深夜、彼女と車でとある神社へ初詣に行った帰りの出来事だった。
その車内ではちょっとしたことで彼女と口論となり、気まずい雰囲気で深夜の田舎道を走っていた。
左右には民家などほとんどなく、田んぼばかりが広がる真っすぐな道を不機嫌に車を走らせていた私は、ハイビ―ムライトの向こう側にひとつの人影を確認した。
元旦になったばかりの深夜、いくら田舎道とはいえ人が歩いていても不思議ではないだろう。
徐々に近づいてくる人影、長い髪の毛と白いブラウス、そしてすらっとした若々しい脚が見えている。
どうやら若い女性のようだ。いくら元旦になったばかりとはいえ、こんな深夜に若い女性があるくにしては場違いなくらい田舎道だった。
違和感を感じつつも、車はそこそこのスピードで走っている。
その人影はこっちにどんどん近づいてくる。
さらによく見ると、どうやらその女性は白いブラウス一枚で歩いているようだ。
こんな寒い真冬の深夜にブラウス一枚で歩いているなんて、なにか訳があるだろうと心配になり車のスピードを落とした。
そしていざその女性とすれ違う瞬間、顔を覗き込んだら、その顔は深いしわで埋め尽くされた老婆の顔だった。
女性の横を通り過ぎ、しばらくして車を止めた。
彼女も同じものを見ていたようで、喧嘩を休戦し、いま見たものについて話し合ったところ、お互いの意見は一致した。
そしてバックミラーで後ろを振り返った時には、もうその老婆の姿はなくなっていた。道路の左右はやはり、辺り一面田んぼが広がる風景、遠くに民家の灯りが寂しく輝いているだけだった。
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