優しい老夫婦と騒音を撒き散らす男
投稿者:ぴ (414)
その頃の私の生活は、周りから見てとても酷かったと思います。
7年間ほどお付き合いしていた人と何の因果なのか別れることになり、その1年後にその人が私の友人と結婚するという報告を聞いて、何もかもが嫌になってしまいました。
何の恨みがあって、わざわざ私の友人と結婚するのか元カレのことも理解ができなかったし、私たちが別れたときに私を慰めてくれた友人と結婚することになり、なんだか二人に裏切られた気持ちで落ち込みました。
その影響でそれまで地道に働いていた会社も辞め、生活は荒れに荒れていて、お酒も止まりませんでした。
このようなことが原因で、以前住んでいたアパートを追い出され、そのアパートに住み始めたのです。
まるでこれほど可哀そうな人が世界に私一人しかいないと思うようなそんな心境になっていました。
そのアパートの借りることになったのは、アパートを追い出されて行く宛のない私を泊まらせてくれていた優しい友人が見つけてくれたからです。
おそらく一刻も早く家から出ていってほしかったのもあったと思います。
それでも、その子はやる気をすべてなくした私の代わりにこの部屋を見つけてくれました。
アパートの立地は良かったです。
それでも初めてアパートを見たときの印象は良いものではありませんでした。
辺りは住宅街でしたし、周りも静かで落ち着いていました。
でもなんだか「暗い」というのが私的には気がかりでした。
私がアパートを見た第一印象は「陰気な雰囲気」というもので、決していいものではなかったです。
日当たりが悪いのかそのアパートだけなんだか暗いんです。
それでも友達がせっかく探してくれたアパートだし、私的にはもうどうにでもなれという気持ちだったので、ぜんぜんどこでも良かったです。
そんなわけでそのアパートに暮らし始めたのでした。
私の部屋の右隣には、いつもにこにこ仲良さげな老夫婦が暮らしていました。
そして反対側のお隣には、なんというか覇気がない若者が住んでいました。
その若者は見かけるたびにいつも俯いて何か音楽を聴いているのです。
耳にイヤホンをして帽子を目深に被っていてとても話しかけにくい雰囲気です。
まあ私も人のことは言えない状態だったので、ある意味安心感がありました。
そのとき、幸せそうな人を見ると異常ににむしゃくしゃしてしまったので、私は隣の仲よさげな老夫婦よりも、この若者を見ているほうが安心しました。
けれど一つだけこの若者に不満があったのです。
それは深夜1時頃に必ず大音量で音楽を聴くことでした。
私は当時精神的ショックからお酒に逃げているところがありました。
だから飲んでいるときに聞こえる明るい音楽が本当に嫌いだったのです。
なのにこの若い者がいつも午前1時頃になると明るいヒップホップを流します。
騒音被害で何度も殺気立ってしまいました。
あるときに我慢できなくなって、この若者の部屋のピンポンを鳴らしました。
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