文通相手の最後の手紙
投稿者:ぴ (414)
昔、まだ小学生高学年だった頃、私の身近では文通が流行りました。
私は漫画が好きで、絵を書くのが趣味な、なかなかインドアな子供でした。
その関係もあり文通とともに絵を送りあうような文通をしていました。
きっかけは仲が良かった友人だったと思うのですけど、先にこの子がこのような文通をしており、私もやりたいと思いました。
もうどこで文通相手を募ったのかまではぜんぜん覚えていないのですが、友達から聞いてそういう相手を見つけて、手紙の交換をするようになったのです。
相手の名前は「かやちゃん」と言いました。
すごく綺麗な絵を描く子で、私は最初かやちゃんのことを尊敬していました。
私もこんな絵が描けるようになりたいと思ったし、真似したりして、もっと絵が上手になりたいと思いました。
でもかやちゃんはいつも絵を褒める私に対してとても謙虚で、「こんなことしかできない」とか「趣味がこれしかない」とか「友達がいない」とかすごくネガティブな文章を書く子で、私はかやちゃんのそういったところは少し苦手でした。
その子とは1年以上文通を続けたと思うのですが、私はだんだん文通することが苦痛に感じて来たのです。
年を重ねるごとにだんだんと絵を描くこと以外の興味も出てきて、あまり絵にこだわらなくなったのです。
絵を描くこと以外に、いろんな興味があることが出てきてそっちに夢中になりました。
私がこの文通をするきっかけとなった友達も、その頃は文通に飽きたといってやらなくなっており、私も次第にかやちゃんへの手紙を送る頻度が減ってきました。
そんな最中に、かやちゃんから「会いたい」という手紙が届いたのです。
その手紙には「近くに来る用事があるので、会いたいです」と書いてありました。
この手紙を見たときは普通に嬉しかったです。
私もかやちゃんを見てみたいと思っていたし、文通相手と会うなんてちょっとドラマチックに思えました。
だからすぐに「いいよ」という返事を書いて、その日を心待ちにしました。
そして私は家の近くにある公園でかやちゃんと待ち合わせしたのでした。
その日は生憎の雨で、私は公園で傘をさしてかやちゃんがやってくるのを待ちました。
しかし、待ち合わせ時間を過ぎてもかやちゃんが現れません。
当時は携帯もなかったので、とにかくその手紙をたよりに待ちました。
しかし、1時間経っても2時間経ってもぜんぜんやって来なくて、私は結局傘をさしたまま3時間ほどその場で待たされたと思います。
それでもかやちゃんが公園にやってくることはありませんでした。
私は約束をすっぽかされたと思って、すごく腹が立ったし、騙されたと思って悲しかったです。
それからすぐにかやちゃんに手紙を出しました。
すると、その手紙の返事は想像以上に早く帰ってきました。
最初はとにかく腹を立てていた私でしたが、その手紙を見て怒りは収まりました。
なぜなら「会えなくてごめんね」とかやちゃんが真摯に謝っている手紙で、病気で来られなくなったと書いてあったからです。
どうやらかやちゃんはもともと病気を患っていたみたいで、それで学校にも行けず、友達もできず、マンガだけが趣味でひたすら絵を書いていたそうなのです。
いい話でした