エレベーターの男
投稿者:びぃ (5)
そこからは軽くパニックに陥りました。
乗ってしまったものは仕方ない、今さら降りるのも不自然だと、必死に冷静を装いながら一階のボタンを押した私。動き出したエレベーターに早く、早くと願います。
思い起こせばそもそもこの清掃員については、友人とは一度も話題になりませんでした。
…この男は本当に実在するのか?
友人には見えているのか?
見えているのは私だけなのではないのか?
不安に少し泣きそうになりながら、6…5…と小さくなっていく数字に後ちょっと…後ちょっとと思っていたその時、今の今まで微動だにしなかった男が急に手を伸ばし、3階のボタンを押しました。
チンッと音と共にエレベーターが止まるやいなや、勢いよく走って降りていく男。
男を見送りながら扉がしまったその瞬間、私と友人は共に「怖かったー!!」と叫びました。
「いや、まじで幽霊だったらどうしようって思った」
「ほんとそれ。怖すぎ。なんで同じとこに同じポーズで立ってんの?」
「ボタンも押されてないし、ほんと何だったの」
と、安堵から手を取り合って愚痴りあいました。
そして無事一階についた後、急いでビルを出ました。
その後、両親に思い出話としてその話をすると「女だけでそんなところに行くな」と酷く怒られました。友人もそうだったようです。
「言われなくてももう二度と行かないよね」
「ほんとほんと」
それ以来、私は少しでも怪しいと感じた場所には行かないようにすることを心に決めました。
正直な話、今でもエレベーターの男が何をしたかったのか分かりません。
そもそも服装や持ち物がそれに近かっただけで、本当に清掃員だったのかどうかも分かりません。
もしかしたら私達が無事にビルを出られたのもただ幸運だっただけかもしれないのです。
迷ってたどり着いたビルですので最早このビルがどこに建っていたのかも思い出せませんが、もし、これをお読みの皆さんが旅行先で怪しいビルにたどり着いてしまった際には絶対に、中に入らないことをオススメします。
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