お向かいに現れる謎の男性

今から十数年前、私の住んでいた実家が災害で倒壊し、団地に仮住まいをしていた頃の話です。

私が住む部屋の向かいの男性が、私が外に出ると同じように出て会釈をすることが毎日のように続きました。

こんなにもタイミングが合うとはと不信感を感じた私が職場の上司に相談をし、勤務時間をずらすことになりました。

これまで朝8時頃出ていたのですが、朝6時に出るようになりました。

なぜか朝6時に出てもお向かいの人は外に出ており、小さな鉢植えに水をやっていました。

満面の笑みで会釈をする彼の姿に急に鳥肌が立ちました。

一緒に住んでいた母に相談をしたところ、「おかしいわね。」の一言。

お向かいに住んでいるのは私より少し年上の女性で、その人は一人暮らしをしているとのこと。

私が見かけた男性が住んでいるという話は聞いたことがないそうです。

回覧板を持って行った際に母が探りを入れるように「1人暮らしだと大変なことも多いですから、気軽に頼ってくださいね。」と声をかけたところ。

「最近少し心細くなってきていたので、今度ゆっくり話を聞いてもらえたら嬉しいです。」と言われたそうです。

お向かいの家に上がってお茶をしたそうですが、やはり女性の1人暮らしで、男性が住んでいる形跡もなかったそうです。

結局私たちが退去するまで3年ほど、謎の男性は家から同じタイミングで出てきて会釈をしていました。

結局その男性が何だったのか、未だに分かっていません。