呪いの弱体化（※自己責任系）

そして、明らかな人形の腕がスーッと上がり、俺が翳している懐中電灯に触れようとした時、後ろの扉が勢い良く開き、

「おー、みんなここにいたんだ。置いて行くの酷すぎだって、マジやめてよ」

と、汗だくのＤがドアに寄り掛かって不満を漏らす。

俺達三人は頭がまさにクエスチョン状態で目が泳いでいたと思う。
さっきまでＤが呼んでいたカーテンの向こう側には見知らぬ子供が居て、俺達が来た道から本物のＤがやってきたんだ。

そこで、ふと俺は再び子供の方へ向きなおすと、そこには誰もいなかった。

「あれ？今ここに子供居たよな？」

たまらず一緒に見たであろうＢとＣに確認を取るが、二人は茫然自失と何もない空間を仰ぎ見ているだけだったので、俺は腑に落ちないようにＤの方を見やる。

「お前、どこいたの？」

「は？バッテリーと懐中電灯取りに車に戻るって言ったじゃん。お前がバッテリー無くなりそうだから取ってきてって」

「は？」

どうやらＤは一度車に戻っていたと主張するが、俺はＤにバッテリーを取りに向かわせてないし、何より院内に入ってからそんな会話をしていないと主張した。
互いに維持の張り合いのようにムキになりかけたが、どうにもＢとＣが物静かなので二人に確認を取ることにした。

「なあ、俺、Ｄに何も頼んでないよな？」

二人に問い掛けてみると、二人は青白い顔でやはり何もない空間を見上げてポカーンとだらしなく開口してるだけで、特に何をするでもなく押し黙っている。

俺は意味が解らず二人が見上げる一点を目を細めて注視してみた。

しかし、やはり何もいないとわかり溜め息をつくが、何気なしにスマホで写真を撮り、再びＤに話しかけた。

「本当に俺何も頼んでないって。てか、中に入ってからずっと俺達の事呼んでたのＤだろ？お前に呼ばれたから二階まで来たんだし」

「いやいや、俺車から戻ってきたら皆居なくて、微かにお前らの声が聞こえたから先に行ってると思って追いかけてきたんだよ」

もはや互いの主張が嚙み合わず堂々巡りになってきたので、とりあえず車に戻る事に決め、俺は未だ沈黙のままの二人に退散の旨を伝えた。

これまた意外な事に二人は何もない一点を見上げるの止めたと思えば、今度は俺の事を凝視し、青ざめたように頷くだけだった。

Ｄとの再会と口論のせいですっかり肝試しのムードは冷めてしまい、道中怖かった廊下も今やただの廃墟としか思えなくなった俺は、ただの巡回警備員のようにライト片手に闊歩する。

「ここまで一人で来るのマジで怖かったんだぞ」

手あたり次第気になったモノを照らしながら肩を竦めるＤは、心底怖そうに語る。
まあ、Ｄが嘘をついてるのせよ、一人で行動していたのは確かなのだから、その度胸は大したものだ。
エレベーターの異音や車椅子で怯えていた俺が心底臆病に思え惨めな気持ちになる。

……車椅子？

そういえば道中にあった車椅子は今通った時あっただろうか？

既に階段を下りて一階に差しかかかった俺は、不意に立ち止まった。
後続のＤを始め、ＢとＣが立て続けに止まり停滞すると、Ｄは「どした？」と肌寒いのか両肩を摩りながら辺りを見渡す。