視線
投稿者:ぴ (414)
彼自体はすごく優しくて、すごく大好きでした。でも彼といると心が休まることがなかったです。
だって常に誰かに見張られているような気がしてしまうのです。
その後も私は何度か視線を感じることがあり、その度に目が合うと違う女性と目が会うことが怖くなっていきました。
誰かに見られている視線は一人の女性からではなく、驚くくらい複数の女性からだったのです。
すべて彼に打ち明けてみましたが、彼はまったく信じてくれなくて、「それは気のせいじゃないかな?」と私を心配していました。
まるで病んでいる人みたいな扱いをされて、すごく傷ついたし、落ち込みました。
彼に紹介された精神科を訪ねてもみましたが、私の話に耳も貸してくれず、私は途方にくれたのです。
この視線に私は外出をしたくないと思うくらいに追い詰められていました。
そんなときでした。朝から急に家のインターホンがピンポーンと鳴って、誰かが訪ねてきたのです。
私が戸を開けると、目が鋭い年配の男性と少し若そうな青年が立っていました。
そして「この男をご存じですか?」と私に尋ねてきました。
警察でした。写真の男は紛れもなく、私の婚約者でした。私はドキドキする心臓を宥めながら、この状況に何とか対応しました。
そして、まさかの話を聞かされたのです。私の婚約者が詐欺師だということを聞かされて、信じられない気持ちになりました。
しかも、被害者の写真をいくつか見せられて、私はハッとしました。
その被害者の顔の中に見覚えがある人がちらほらいたからです。
ここ最近にかけて、何度も視線を感じていて、私はいろんな女性と目が逢い、その視線に怯えていました。
被害者の中の数人は私が最近視線を感じたときに目が合った女性達だったのです。
「私はすぐに最近見たことがあります。」と答えましたね。
そして最近目が合った女性の話をすると、警察はとても変な顔になりました。
「この人とこの人とも会ったことがあるんですか?」と警察に聞かれました。
私が頷くと、「最近なんですか?」と重ねて聞いてきました。
あまりにしつこく聞かれるので、困惑しながら「はい」と答えたら何とも言えない渋い顔をされてしまいました。
しばらく事情聴取するために、警察署で詳しい話をしましたが、私はそのときに驚くことを聞かされたのです。
それは「この人とこの人は数年前にお亡くなりになっています」と言われたのです。
しかも、死因は詐欺師である婚約者に大金を騙しとられた上での自殺なんだそうです。
私はその話を聞かされたとき、鳥肌がぞぞっと広がるのを感じました。
どうやら私にずっと視線を送っていた人は生きた人じゃなかったようなのです。
おそらく彼を恨んでいたのでしょうね。彼の婚約者である私にも敵意を向けていたのかもしれません。
当然のごとく、私は犯罪を犯した彼とは完全に縁を切りました。
最後に「本当に好きだった」と告白され、実は少し揺らいだところはありました。
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