三輪車の女の子
投稿者:トプス (1)
彼女は虚ろな目でどこかを見つめ、笑いながらそんなことを呟いていました。
「おい!お前!どうしたんだよ!しっかりしろ!」
とA君が彼女の肩を揺すってもA君の顔すら見ません。
すると後ろからB君が
「なぁ・・本当にお前らここに入ったのか?」
と聞いてきました。
「ここ・・・どう見ても廃墟だし、入れるように思えないけど・・」
そう言われて、驚いてホテルを見てみると、壁には苔やツタが生い茂り、腐って落ちたであろう天井が玄関口を塞いでしまっていて、確かにどう見ても入れる建物には見えませんでした。
キィ・・キィ・・
あの音が聞こえたような気がしたのと同時に、B君から「とりあえず、彼女を早く連れてここから立ち去った方がいいな・・」
と言われて、A君は彼女を抱え、三人で急いでそこを去ったそうです。
後日、あのホテルを調べてみたところ、ホテルが立つ前はマンションだったそうで、そこに母親と小さな娘が住んでいたそうです。
ある日、女の子は、いつも乗っていたお気に入りの三輪車に乗り、お母さんと出かけました。
お母さんが、近所の人と喋っていて、目を離したすきに道路に飛び出てしまいます。
そして、走ってきたトラックにひかれて女の子が亡くなるという事件があったそうです。
小さな娘の無残な遺体を見た母親は、自分がきちんと見ていなかったせいだと自身を責め、精神を病んでしまい、病院に入院するという形でそのマンションから退居したそうです。
その後から、住人の間でその女の子の幽霊が出ると噂になり、皆怖がって退居する人が続出し、大家もそのマンションを手放してしまいました。
その後、ホテルになるも、結局経営難になり、ホテルもつぶれてしまったそうです。
A君の彼女はというと、あの後も正気にならず、B君の紹介してくれたお寺に連絡し、相談をしました。
そして、住職の勧めでお寺で過ごさせて貰いながら、お祓いを今も受けているそうです。
あの女の子は一人で寂しくて、彼らをあの場所に呼んだのでしょうか。
そして彼女だけこういう風になってしまったのは、離れ離れになってしまったお母さんと彼女を重ねてしまい、自分がかつてお母さんと過ごしたあの場所で、再び一緒に過ごそうと彼女を連れて行ったのでしょうか。
今もあの、キィ・・キィ・・という、寂し気でどこか泣いているような三輪車の音が耳から離れない、とA君は語ってくれました。
ホテルが実は廃墟だった系の話好き
女の子が追いかけて来て部屋に入ってくるところとか想像してしまって怖かった
ただの怖い話かと思ったら、せつないストーリーがあって、心が苦しくなりました。女の子が成仏しますように。
彼女が悲惨ですね