夏祭り
投稿者:GENGO (32)
長い時間バスに揺られて、いままで行ったことのない
山奥に入っていったが、Aにはとても新鮮で楽しい時間だった。
バスを降りた時は、まだ夕方というには早い時間ではあったが、
山裾にくっついているようなM村はすでに夕方の気配が漂っていた。
少し歩いて祖母の言う「親戚の家」に入った。
家の中には思ったよりも大勢の大人がいた。10人くらい。
どうやら夏祭りなので、Aと祖母のように
親戚がアチコチからあつまっていたらしい。
年配の人間が多かったが、ひとりだけAと同じ年齢だという
女の子がいた。
最初は戸惑ったが子供同士すぐに仲良くなった。
女の子はB子と名乗り親に連れられて来た、と言った。
どこから来たのかは、聞かなかったのか忘れたのか覚えていない。
豪華な夕食を振舞われたがワリと手早く済ませて、
親戚一同で夏祭りの会場である神社に向かった。
神社は山の中だというのに、綺麗に祭りの装飾がされていたし
参道には出店の金魚スクイとか綿菓子屋などもならんでおり
予想していたよりも賑やかな祭りだった。
そしてAは思いがけず祖母から頼み事をされた。
ちょっと言うとおりに行動してくれ、と。
突然の話で戸惑ったが、すぐ済む、何も難しくないから、
と頼まれたので仕方なく承知した。
それは神社の前の鳥居から参道を進んで神社の前まで歩いていき、
時計回りに神社の後ろに回りこみ、そこにある祠に一礼をする。
そしてまた戻ってくる。
ただしそれはB子と一緒に肩を並べて歩き、けれども
戻ってくるまで一言も声を出してはいけない、
B子とも口をきいてはいけない、
というものだった。
確かにむずかしいことではないが意味がわからないし、
内心ほっとしつつもB子と一緒に歩く、ということに
子供ながら緊張し気恥ずかしい感じはした。
青春ですね