不思議の国のアリス症候群
投稿者:アマリリス (3)
A子は振り返り、Dが負傷したことに気づきオロオロと立ち止まる。
村人はもうすぐそこまで迫っていた。
私は武器になるものがないか地べたをまさぐっていたが、頼りにならない湿気た枝と乾燥して中身がスカスカな枝しかなく、ハッと村人が投げた槍に意識を持っていかれた。
これならば対抗できるのでは、と思い、大木に突き刺さった槍を引っこ抜こうとするがどこまで食い込んでいるのか非力な私では抜けそうになかった。
「A子!」
私がA子を呼ぶと、A子も我に還り、槍を一緒に引っこ抜く。
A子が大木に足を宛がい体重をかけたタイミングで槍は抜け、私は尻餅をつく。
振り返れば、村人とCが取っ組み合いに入っており、Dが倒れていた。
いや、Cもすぐ突き飛ばされていたが、その代わりにDがすかさず立ち上がり村人へ掴みかかる。
成人男性二人掛かりでも敵わないのかと思いつつ、私は尻餅をついていたCに槍を手渡しに走る。
「これ!」
語彙も何もなく、私は槍を突き付けると、Cは瞬時に理解して槍を掴む。
再びDが殴り倒され後ろに倒れようとしたところ私は寸でのところで抱き止めることができた。
「このやろ!」
Cが槍を高く振りかぶり、村人目掛けて槍を振り下ろし、村人の頭を叩きつけた。
村人はよろめくように何歩か後退りすると、着けていた仮面が砕けて地面に落ちる。
そして、遂にその素顔を私達に晒すことになったのだが、ここで再び太鼓の音が響くのだった。
ドドン、ドドン、ドドドドド!
先程と違い、端から力強い音が丹田を揺さぶり、寒気を覚えさせた。
その音を背景に、村人はゆっくりと顔をあげ、私達は彼の素顔を見る事になる。
ギョロりと飛び出そうな真ん丸と白い両目に赤い瞳孔。
少し折れ出た鷹のような鼻に黄ばんだ歯の羅列。
頬に左右二つ斑点があり、唇の両端に口紅でなぞったようなつり上がった模様が塗られている。
およそ人間と思えないパーツを目にして、私達は硬直しかけたものの、すかさずCが槍を横に薙ぎ、村人の足を払った。
村人は何か叫んだように転げたが、その間に私達は再び逃走を始めた。
それから日が降りたのか、随分と闇夜が広がってきて、どれくらい逃げ続けたのか、もう両肩で息をするのもやっとの疲労困憊な状態。
私達は今、トンネル付近の高台にある森林に身を潜めている。
例のトンネルには村人が何人か見張りのように立っており、集落から高台までの道には残りの村人が私達の捜索を諦めてないのか何度も往復しているのが見えた。
「これからどうしよ……」
A子が怯えたように膝を畳み抱えながら座り込んでいる。
Dは傷口がそこまで深くないようで、上着を包帯がわりに結んでおり、Cは村人の槍を片手に奴等の様子をうかがっていた。
Cは宛ら槍を拾った戦士みたいで、ちょっと笑えた。
ファンタジー読んでるみたいで面白かったです
読み応えがありましたが、本当に不思議な話ですね。
なんか・・・・
こわ・・