行方不明の真相
投稿者:二十左衛門 (3)
ガタ、ゴトン
その度に母親が僕を呪い殺す勢いで睨み、僕も緊張のあまり背筋を伸ばすのですが、
「ごめんなさいね。きっとネズミが騒いでいるの。古い家だから」
と僕に教えてくれるのですが、どう考えてもネズミが出すような音じゃないと思いました。
何かこう、人が物を蹴飛ばすような、力を込めた音のように思えたのです。
音の出所は僕の正面に見える襖からでしょうか。
押し入れ、もしくは隣にもう一つ部屋があるのかわかりませんが、そこから聞こえてきます。
「○○君、ご飯食べてく?」
物音に意識がもっていかれ、O君との会話も途切れ途切れとなっていた時、母親が僕を夕飯に誘っていきました。
「あ、今日はお母さんが僕の好きなハンバーグ作るから早く帰ってきなさいって言われてて……」
僕は咄嗟に嘘をついて断りを入れると、母親は一言「そうなの」と溢した後、キッチンに向き直りキャベツを丸々まな板に置くと、力強く、ドンと包丁を振り下ろし真っ二つにしました。
思わず肩を跳ねて身構えると、母親はボサボサの髪越しに横顔をちらつかせ、「じゃあはやく帰らないとね」と笑みを浮かべるのでした。
結局、物音の正体がわからないままその日はO君家から逃げるようにして飛び出し、帰宅しました。
そんなことがあった数日後、朝のホームルームで先生から警備強化の話が上がったのです。
何でも、隣街の小学生が行方不明になったそうで、我が校も警備の観点から登下校の強化を図り、父兄の協力を呼び掛けているのだとか。
その事もあって翌日から通学路では父兄の人達が黄色い旗を持って僕たち生徒を守ってくれました。
それから数日後、A君がO君に暴言を吐いたことで、中休みだというのに教室内がお通夜のように静まりかえりました。
「俺見たぞ!おまえんちの母ちゃんが猫持って帰ってんの!」
その猫というのが、A君を始め、僕や学校の児童の一部が可愛がっている野良猫であり、その甲斐あってかずいぶん人に懐くようになった猫のことです。
A君の話では、その猫を踏みつけぐったりした首を掴み、そのままレジ袋に押し込み持って帰ったというのです。
さすがにそこまではしないだろうと思いましたが、O君の母親を思い出した僕は、A君に反論することもなく黙って見ていました。
「し、知らない」
「ぜってーお前の母ちゃんが殺したんだ!」
否定するO君と激昂するA君。
ほぼ一方的にA君が怒りO君の胸ぐらを掴んだタイミングで先生がやってきて、二人は別室へと連れていかれてこの騒動は下火となりました。
結局、猫の安否や、O君の母親への疑念もはらわれぬまま、数日が過ぎるのですが、事態は思わぬ方へ転がることに。
A君が行方不明になったのです。
先生は僕たちに最大限配慮した口調でA君のことを話してくれ、僕は教室の備品の一部と同化したように、ただただ呆然と耳にしていました。
A君が行方不明になって三日ほど経ちますが、噂が噂を上書きし、小学生の間では巨大組織による誘拐だの、人身売買だの、この学校自体が養豚場のような役割でA君は出荷されただの、あられもない噂が蔓延っています。
しかし、そんな中で気になるのがO君でした。
面白かったです
なんか似たような事件を聞いたことがあるような・・・
食べた肉は結局何だったんだろう
もしかしてジビエ…
食わされたのか…俺以外の肉を……