行方不明の真相
投稿者:二十左衛門 (3)
O君は普段から挙動不審なのですが、どうにも過剰に落ち着きない様子で周囲を警戒しています。
この日、僕はO君を尾行しようと思い至り、下校時に実行したのです。
O君が家に着くまで何も起きなかったので肩透かしに思うものの、いったい何が起きるのかと問われれば特に思いつくものがなく、僕は家路に着こうと思い振り返りました。
「こんにちは、○○君。どうしたの?こんなところで」
そこにO君の母親が佇んでいました。
相変わらず奇抜な格好に買い物を提げて、アサリのように細い目で僕を見下ろしています。
「あ、そ、その。友達が行方不明で、だから、O君のことも心配で、護衛を……」
今思えば苦しい言い訳だと反省しますが、O君の母親には言い訳が通ったらしく、返事の代わりにのっぺりとした笑顔が返されました。
「ご飯、食べてくでしょ?」
「え、あの、その」
にべもなく誘われた僕は返答に迷っていましたが、母親の圧を受け、喉を締め付けられたようにか細い声量で承諾したのでした。
二回目のO君の家に上がると、懐かしき湿気た座布団に座らせ、卓袱台につくことになりました。
一度目と違うのは、この狭い居間にO君の父親がいるということ。
O君の父親はステテコに腹巻き姿といった絵に書いたような昭和の頑固親父くさい風貌に加え、横に寝っ転がりテレビに夢中のようでした。
そうしていつの間にか並べられた肉野菜炒めと味噌汁、そしてご飯にお付けもの。
僕は合掌しO君家族とご飯をいただくのでした。
ガタガタ、ゴト
襖から物音が聞こえる。
けれども、卓袱台を囲んだO君一家は物音に触れることなくご飯を頬張っています。
僕も肉野菜炒めに箸を伸ばすのですが、どうにも赤黒く嗅いだことのない臭みに顔をしかめてしまい、母親に穴が空くほど見られることになり、焦って頬張ってしまいました。
弾力の強さに顎が疲れ、鼻血を飲み込んだときのような鉄分の味が広がり、僕は薄いお茶で流し込みます。
ガタン、ガタン、ガタガタ
「うるせーぞ!」
音が激しくなった頃、突然父親が怒号を発し、僕は比喩でも何でもなく、本当に膝から跳び跳ねてしまいました。
父親の怒号のせいか、物音は静まり、再び食事が再開されます。
このまま食事が終われば帰ろうと思った矢先、これまで会話に参加することなく寡黙だった父親が僕に話しかけてきたのです。
「おまえ、Oの友達か?」
この問いかけに困惑したものの、例え事実でなくともO君の前で「違うよ」なんて残酷なことなんか言えるはずもなく、僕はただ一言、この場を乗り切る嘘をつくのです。
「はい」
その返答にO君と母親は満足したのかこれまでにない笑みを浮かべており、父親は小さく何度か頷きはしたのの特に会話を広めることもなく食事を済まし、風呂場へと立ち去りました。
面白かったです
なんか似たような事件を聞いたことがあるような・・・
食べた肉は結局何だったんだろう
もしかしてジビエ…
食わされたのか…俺以外の肉を……