霊との戦い at トイレ
投稿者:with (43)
大学三年の話。
ある日、猛烈な便意に襲われて、校舎の中でも人の出入りの少ない四階の隅のトイレへ駆け込んだ時の体験談。
この日も四階へ上がるまで僅かな人とのすれ違いのみで、当の四階へ辿り着けば人っ子一人いない世界から隔絶されたような静けさだった。
誰もいない事に内心ラッキーだなんて喜び、便意に負けない内にトイレへと駆け込んだ。
男子トイレは小便器が二つ大便器が二つのこぢんまりとした作りのせいか、日陰が多く陰気臭いがこの際贅沢は言っていられない。
手前の近い大便器に駆け込み、俺は一気にはりつめたものを解放した。
まさに天へ昇る浮遊感にも似た格別の時。
用を足し終わり、水洗レバーを引き流す。
さて出ようか、と個室トイレの施錠に手を差し掛けた所、ガコッとすぐさま鍵が掛かる。
このトイレのノブは、昔ながらの横に倒した取手式で、施錠はスライド式のタイプ。
摘まみを左右にスライドしなければ施錠できないのだが、俺が鍵を外すと勝手にスライドして再び施錠されて個室から出れないといった繰り返しになっている。
「は?誰だよ」
きっと誰かの悪戯だと思い、文句言う。
しかし、誰かが入ってくる音や気配はなかったと思いだし、俺はしばし息を潜める。
冷静に考えれば、スライド式の施錠をどうやって外から掛ける?
しばらく聞き耳を立てたが俺の息遣いしか聞こえず、誰もいない事を確認して再び施錠を外す。
ガコッ。
やはり、施錠が自然と掛かりロックされる。
意味がわからない。
機械でもないのに目の前の施錠がひとりでにスライドしている光景は不気味だった。
何かタネがあるのだろうか?
糸で引っ張るとか、磁力で外から動かしているのだとか、原始的な人の手で行われている可能性を模索していると、下の方からスッと何かが視界に入る。
「うおおおっ!?」
長い指が覗き、手首までがドアの下の隙間から伸びてくる。
さすがに腕は入らないのか、手首が翻り、ドアをバタバタと叩く。
ちょっとしたシュールなコメディとホラーを足したような光景を前に俺は硬直していたが、今なら鍵を開けても邪魔されないのではと思い至り、手首を踏まないように鍵を開けた。
これまで解錠するとすぐに施錠されてきたが、目論見通り邪魔はされない。
ならば今しかないとドアを思いきり引き開く。
これで悪戯野郎と対面することになるが、さんざんビビらせてくれたんだ、吃驚した顔くらい拝ませてもらおう。
そう思ったがそこには誰もいなかった。
勢いのある怖い話すきw
ちゃんと手を石鹸で洗ってて、偉い!
ちゃんと手を洗ってる!!