迷いの藪にて
投稿者:テラー (26)
短編
2022/03/02
14:44
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父方の祖父が住んでいるのは岐阜の田舎です。そこは自然豊かな山間の集落で、今でもクマや猪が農作物を荒らしに下りてきます。
しかしそんな野生動物たちさえ近付かない場所がありました。地元で迷いの藪といわれている雑木林です。何故そう呼ばれているのか幼い頃は知りませんでしたが、やがて祖父が教えてくれました。
数十年前に村の子どもたちが立て続けに消え、迷いの藪の近くで履き物や着物の切れ端が見付かったというのです。
以来迷いの藪は神隠しの現場として恐れられ、子どもが遊ぶのが禁じられました。
何故子どもが消えるのかはわかっていません。次元が歪んでいるのかもしれません。祖父は幼い頃藪の付近で小柄な人影を目撃したそうですが、それは風車を持った着物の女の子でした。
現在も迷いの藪は手付かずで残されています。子どもがいる主婦たちはわざわざ藪を迂回して買い物にいくので、皆不便だとこぼしています。
迷いの藪が八幡の藪知らずの飛び地だとしたら、日本全国に似たような場所があるのかもしれません。
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田舎に不思議な話が多いのは、人の手があまり入らない場所があるからかも?