ある占い師の不思議な客
投稿者:足が太い (69)
占い師をしている友達がいるんだけど、その友達から、ある時「ちょっと聞いてほしい話があるんだけど」って相談された。
普段は明るくて、「私は悩み事があっても一晩眠ればすっかり忘れられるくらい能天気」と自分で言っている友達が、珍しく思いつめた顔をしていた。
だから、一体何があったのか聞いてみたんだけど、これが物凄く後味が悪い話しだった。
友達がタロット占い師として勤めている占い店に、ある男性客が来たんだって。
男性客はあまり来ないお店だから、友達は珍しいなと思いながらその人を占った。
占う内容は仕事運についてで、男性客に割と多い相談内容だったから、とくに不思議に思うことなく占いを進めていった。
唯一気になったのは、その男性客の右肩あたりに人の顔が視えること。
友達は霊感があまりない方だし、霊視も苦手なタイプなので、いつもだったら幽霊とかそんなのあんまり見えないらしい。
でも、その時は男性客の右肩にいたのが余程強い霊だったのか、苦悶の表情を浮かべる女性の顔が見えていたんだとか。
友達はなるべく女性の顔と視線を合わせないようにしながら占いをした。
占い結果は「今年の仕事運は上々」とか仕事に関することばかりで、何枚タロットカードをめくっても女性の顔については出てこない。
だから余計なことは言わない方がいいかと思って、友達は男性客の右肩に視えるものについては、黙っておくことにしたんだとか。
男性客は占い結果に満足して、機嫌良く帰っていった。
友達は「夢に出そうなくらい怖い顔だったから、出来ればあの男性客とはもう会いたくないな」って思ってたって。
でも男性客は友達を気に入ったようで、1ヶ月に1度のペースで占いに来ていた。
占い内容は全て仕事についてで、男性客の態度は普通、怖いとか極端に暗いとか、何か隠し事をしているとかはない。
ただ、占いに来る度に、男性客の肩や頭とかにどんどん顔が増えていくのだとか。
顔はそれぞれ別人で、性別もバラバラだけど、皆決まって苦悶の表情をしている。
友達が男性客を占うようになって1年経った頃、男性客の周りには10個以上の顔が浮かぶようになっていた。
ここまで来ると友達もいよいよ怪しく感じてきて、同じ店に勤める占い師に相談したんだとか。
その占い師は除霊が得意な界隈では有名な人で、友達もその人だったら男性客の周りに視える顔についても何か分かるかもって思ったらしい。
友達「1年前から頻繁に来てくれるお客さんがいるんだけど、その人の周りに苦しそうな顔がどんどん増えていくの」
同僚占い師「分かった、占っているところを見てみるから、そのお客さんがお店に来たら教えて」
そういう訳で、男性客がお店に来たら同僚占い師に合図して、その男性客の姿を見てもらったんだけど…。
男性客が帰った後、友達が「どうだった?」って聞いたら、同僚占い師は青い顔をして震えながら「アレはダメ、関わっちゃダメな類。あなたも気を付けた方がいいよ、深く関わらないようにして」としか言わず、詳しくは教えてもらえなかったって。
友達は同僚占い師の尋常ではない怯え方にびっくりして、お店に言って、その男性客がお店に来ても休んでいることにしてもらっていたらしい。
2~3回くらいはそれで誤魔化せていたけれど、4回目はとうとう誤魔化せなくなって、友達が退勤するところを狙って、お店を出たところを男性客に掴まってしまった。
男性客「どうして嘘をついて僕を避けるんですか?僕はただ、占ってもらいたいだけなのに…。何か迷惑をかけるようなことしましたか?」
友達「いえ、迷惑行為はされていませんけど、その、ええと…」
男性客「していないなら、どうして占ってくれないんですか?」
友達「あ、あなたの肩や背中に、顔が視えるんです!」
男性客「…顔?顔って、どんな顔ですか?」
友達「男性と女性がそれぞれ10名以上…、皆、苦悶の表情を浮かべています」
友達がそこまで言って、ふと男性客を見ると、男性客は嫌な笑みで友達を見つめていたんだとか。
友達が怯えているのが嬉しい、そんな表情でニタニタと見つめてくるので、友達はそれ以上男性客と話しているのが怖くなって、必死に走って逃げて帰ったんだって。
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