ある占い師の不思議な客

私「それで、その男性客とはその後どうなったの？」
友達「顔が視えるって伝えてから、ぱったりと姿を見せなくなったんだけど…。実はね、移籍前のお店の同僚占い師に男性客のことを相談したって言ったじゃない？その占い師が今、行方不明なの」
私「行方不明？何か事件に巻き込まれたとか？まさか、その男性客が…」
友達「あまり考えたくないけど、あの男性客が関係していると思う。だって、男性客がお店に来なくなったのと同時に、その占い師も行方不明になったんだもの」
私「まさか…」
友達「それに、さっき待ち合わせ場所に行くまでの電車の中でね、実は男性客を偶然見かけたの。男性客の背中あたりに、同僚占い師の顔があって…」

友達はそれっきり黙ってしまって、私も何だか気味の悪い話しを聞いてしまったので、何も言えなかった。
2人してしばらく黙ったままいたら、友達が空気を変えるように手をパンッと叩いて、「変な話してごめんね！もしかすると、私の見間違いかもしれない。ううん、きっとそうだと思う。だって、ねぇ、あの男性客と同僚占い師は接点なんてないだろうし…」

友達がこの話を終わりたそうにしていたので、私も友達の気持ちを汲んで、それ以上何も言わないことにした。

後味が悪いのは、友達と会って数日後にその子が行方不明になってしまったから。
友達の母親から「何か知らないか」と電話があったので、男性客について一応話しておいたけど、3年経った今も友達・友達同僚の消息も、男性客の正体も分かってないみたい。
あともう1つ気になることがあって、先日、何気なく友達が勤めていた占い店まで行ってみたんだけど、ちょうどお店から男性が出てくるのが見えたの。
その男性はどこにでもいるって言ったら失礼だけど、本当に印象が薄い普通の人で、どうやらお客さんのようだった。
1つおかしな点があるとすれば、その男性の後ろ頭あたりに友達の顔が浮かんでいたこと。
「あの人が友達が言っていた男性客か…」と思い当たり、後をつけようとしたんだけど、男性客の周りに浮かぶ顔のあまりの禍々しさに足が止まってしまった。
その間に男性客はすたすたと去っていってしまい、見失ってしまったんだよね。

すぐに友達の母親に電話して、さっき見た男性客のことを伝えておいたけれど…。
あの男性客は一体何をしてどうすれば、あんなに色んな人から恨まれるんだろう。
深く知ってしまうと後戻りはできないだろうから、これ以上男性客について深掘りすることは避けるけれど、もしも街中で体の代わりに顔だけの霊をくっつけている男性がいたら、本当に気を付けてほしい。