だまされてるうちに。
投稿者:くま (4)
「あれ、絶対犬じゃなかったよね、へんだよ、服着てたよ」
「……犬だよ、野良犬だよ」
「犬じゃなかったよ?」
「ううん、違うの。あれは『犬』だよ」
「え、でも、」
「きいて。あれは、『犬』だった」
「でも、」
自分が何を言おうと、おねえさんはずっと「『犬』だった」と言い聞かせるように繰り返した。
話しの通じなさに癇癪を起こしそうになった自分に、おねえさんは
「あのね、あれは『犬』だった……そう思わないと、みつかっちゃうよ」
と言い出した。
みつかる? 何に?
……あの、よく分からないナニカに?
途端にざっと血の気が引いた……さっきの、あの震えるような怖気を思い出して、泣きそうになった。
「大丈夫、ちゃんと『犬』だったって思えば、見つからないから、怖くないよ」
グズグズ泣く自分に言い聞かせながら、おねえさんに手を引かれて学校まで戻った。もう『冒険ごっこ』どころではなかった。
学校に戻ると、結局『冒険ごっこ』をやめてドッチボールをしていた友達たちがいて、泣きながらその輪に飛び込んで行った。
普段から泣き虫だった自分はまた泣いてるーなんて言われながら、友達がいた事に安心して気付けばドッチボールに加わっていた。
おねえさんはいなくなっていた。
そのまま夕方になり帰ろうとなった時に、ランドセルをおねえさんの秘密基地に置いてきた事を思い出して青ざめそうになった。けれど、友達があるじゃん、と他の子たちのランドセルを置いた辺りを指さす。
自分のランドセルがあった。
もしかして自分は置いてきたつもりでいたけど、おねえさんが二人分持っていてくれたのかと気づき、ようやくおねえさんにありがとうをいってないと慌てる自分に、友達がまたいう。
「お前、ひとりで泣きながら歩いてたよ」
みんなおねえさんがいたのは見てなかったようで、たぶんこっそり置いていってくれたんだといったけれど、何だか話しが食い違う。
よく聞くと、友達はひとりでべそをかきながら歩いている自分が、友達たちに気付いて泣きながら駆け寄ってきたから仲間にいれたんだという。
ずっと、ひとりだったと。
訳がわからなかった。
確かにおねえさんと手を繋いで歩いていたのに。
『冒険ごっこ』しに山に行って、変なナニカから逃げてきたのに。
おねえさんが夏目友人帳のレイコさんで再生された。
筆者です。
おねえさんが素敵な方で再生されて嬉しい限りです。
上手いですねぇ
風景やあなたやおねえさんの表情浮かんできますよ
冒険ごっこのワードやキーホルダーワクワクしながら読ませてもらいました
ありがとうね
筆者です。
お褒めいただきありがとうございます。
子供の頃って見識が少ないからか、今から思えばささやかな事でもワクワクしたり、過剰に怖かったりしたな、と思いながら書きましたので、そういう物がつたわれば幸いです。