だまされてるうちに。
投稿者:くま (4)
小学校低学年の頃、『冒険ごっこ』という遊びが流行った。
住宅街から少し離れた山や川辺に行って、宝探しや敵から逃げるスパイという設定を作ってかくれんぼや鬼ごっこをする遊びだ。
その日の放課後もあちらこちらで『冒険ごっこ』しようといくつかグループが作られたが、どこも自転車で移動する距離でやろうと話していて、当時まだ自転車に上手く乗れなかった自分は混ぜて貰えなかった。
面白くなかった自分は一人で帰ろうと校庭を突っ切っていた(自宅の方向が正門を通るより校庭のフェンスを登った方が早いから、先生に見つからないようにいつもこっそりよじ登っていた)
その時、一人のおねえさんが声を掛けてきた。
同じクラスの子ではないし少し背も大きくて見たことがなかったから、誰かのおねえさんか上級生だと思った。
もしかしてフェンスを乗り越えるのを怒られるのかなと身構えていたら、
「私と『冒険ごっこ』しない?」
そう言われた。
どちらかと言えば人見知りだったのだが、その日は友達みんなに素っ気なくあしらわれて落ち込んでいたから、嬉しくなって「うん!」と大きく頷いた。
じゃあ行こう、と手を引かれて、いつもの通学路とは違う道に連れていかれる。
友達の家に遊びに行く時に見掛けた川を渡る。
田んぼのあぜ道をバッタを脅かしながら進む。
自分たちの背丈より大きな、名前も知らない雑草をかきわけて小さな山に入る。
その山の中に少し拓けた場所があり、ベニヤ板の様なものや大きな角材を積みあげ、雑にブルーシートを被せたものがあった。
かなり粗雑に張られたブルーシートはテントのようになっていて、子供二人なら余裕で入り込めた。
凄いすごい秘密基地だとはしゃぐ自分に、おねえさんは「ここ、とっておきなんだ」と笑ってくれた。
最初はそのテントの中でおしゃべりしていた。
確か昨日見たアニメの話だとか、学校の先生の話だとか、そのキーホルダー可愛いねだとかのたわいない事を話していた。
何して遊ぼうと話している時に、おねえさんがふと顔を上げた。
すぐ目の前の、テント代わりのブルーシートをじっと見ながら「しぃー」と自分に静かにするようにいう。
どうしたんだろうと、おねえさんを真似してじっとブルーシートを見る……おねえさんがブルーシートを見ていた訳ではなく、外の音を聞いていたんだとすぐにわかった。
はあ、はあ……
がさっ、がさがさ……
何かの粗い息遣いと、積もった枯れ葉を踏みしめる音がする。
多分野良犬だ。
話は聞いていても野良犬なんて遭遇した事のなかった自分は、変に緊張して心臓がバクバクし始めた──かくれんぼの鬼がすぐそこにいる時に近いけれど、それの何倍も怖かった。
たぶん、まだそんな近くにいるわけじゃない。
けれどこの辺りをウロウロしているようだった。
はあ、はあ……
がさがさ……
おねえさんが夏目友人帳のレイコさんで再生された。
筆者です。
おねえさんが素敵な方で再生されて嬉しい限りです。
上手いですねぇ
風景やあなたやおねえさんの表情浮かんできますよ
冒険ごっこのワードやキーホルダーワクワクしながら読ませてもらいました
ありがとうね
筆者です。
お褒めいただきありがとうございます。
子供の頃って見識が少ないからか、今から思えばささやかな事でもワクワクしたり、過剰に怖かったりしたな、と思いながら書きましたので、そういう物がつたわれば幸いです。