だまされてるうちに。
投稿者:くま (4)
そんな音が、遠ざかったり近付いたりしていたが、どうにもいなくなりそうにない。
怖い。
なんでかわからないけど凄く怖い。
何故かは分からないけれどものすごく恐怖を感じていて、ただガチガチ震えていた。
怖くて緊張して、気付けば口を両手で押えながら泣きそうになっている自分。
とんとん。
おねえさんに肩を指でつつかれた。
びっくりしたけど、おねえさんが口パクで手のひら貸して、と言ってきたので片手をおねえさんに差し出した。
おねえさんは手のひらに指で文字を書き出した。
『いし なげる』
『きっと だまされる』
『なげたら にげよう』
そう書き終えて、音が鳴らないように気をつけながら、おねえさんは片手でギリギリ掴めるくらいの大きめの石を自分に見せて、にっこりと笑ってくれた。
一も二もなく頷いた。
どうしてか、おねえさんに従えば大丈夫だと思った。
あんなにガチガチ震えていたのも、不思議と収まった。
がさがさが少し離れた時におねえさんは静かに中腰になり、そっとブルーシートの隙間から外を見る。自分も音を立てないようにしながら中腰に。
おねえさんがこっちをみて、いくよ、と口パクして、自分が頷く。
おねえさんが腕を伸ばして、石を投げた。
がさがさがさがさっ!
今までの比にならない大きな音を立てながら、それは遠ざかっていった。
おねえさんに手を引かれて走る。
ランドセルは置いたまま、秘密基地を飛び出した。
──つい、がさがさ音の方を見た。
……ボロボロの服みたいな、布を身につけた人みたいな、でも絶対に人間じゃないナニカが、蜘蛛みたいなつぶれた格好の四つん這いで、こちらに背を向けて走っていた。
驚いて止まりそうになったけれど、おねえさんが強く手を引いてくれたのでそのまま走って、走って、走って。
──川にかかった橋の辺りまで、ずっと走って来て、ようやくおねえさんは止まった。
自分もおねえさんもへたりこんでゼェゼェしていた。
しばらく息を整えるのに時間がかかったけれど、だんだん落ち着いてきたら自分が見たものが信じられなくて、にげれてよかったーというおねえさんに、あれなんだったの?と聞いた。
おねえさんが夏目友人帳のレイコさんで再生された。
筆者です。
おねえさんが素敵な方で再生されて嬉しい限りです。
上手いですねぇ
風景やあなたやおねえさんの表情浮かんできますよ
冒険ごっこのワードやキーホルダーワクワクしながら読ませてもらいました
ありがとうね
筆者です。
お褒めいただきありがとうございます。
子供の頃って見識が少ないからか、今から思えばささやかな事でもワクワクしたり、過剰に怖かったりしたな、と思いながら書きましたので、そういう物がつたわれば幸いです。