地元の人ならば誰もが知る、怨念が残る池
投稿者:タカラヤ (2)
岐阜県岐阜市、岐阜公園内にある御手洗(みたらし)池での体験談を投稿したいと思います。
この池にはある伝説があります。
なんでも昔、戦国時代の頃、池の上にあった城、岐阜城が攻められたおり、城の中にいた女達がこの御手洗池に次々と身を投げたとか……。
自害のためか、逃げるためかは分かりませんが、多くの女性がその場で命を落としました。
なので今でも、池を掃除すると女の髪の毛や骨が出てくるとか、夜に通りがかると濡れ髪の女がぼうっと立っているとか、そんな噂がまことしやかに囁かれているのです。
当時小学生だった私は、その伝説を聞きとても興奮しました。そして馬鹿なことに、同級生と連れ立って「肝試しをしよう!」という計画まで立ててしまったのです!
当時、クラスの中で幽霊ブームが起きていたことも、計画を後押ししました。
4月の頃。放課後、一度家に帰ってから再び6人で集まって、学校から公園に向かいました。
時刻は三時、明るい時間でした。
道中は様々な幽霊話で大盛りあがりし、全員テンションがおかしくなっていたことを覚えています。
そんなことをしていたらあっという間に、公園に、その中にある池にたどり着いてしまいました。
道すがら、落ちた桜の枝を拾っていた私は、「女の髪を引っ掛けてみせるぞ!」と、皆に良いとこを見せるために池に枝を突っ込みました。皆は大はしゃぎです。
私は駄菓子を混ぜるかのように、ぐるんぐるんと枝を回しました。そして引き上げますが、緑の藻がぺとりと張り付いているだけでした。
「誰が一番先に、女の髪を釣り上げられるか競争だ!」と言い出した友達の声を合図に、枝をそれぞれ持ち寄って池をかき混ぜるという……大変悪ガキらしい迷惑な遊びが始まりました。
私は今回の肝試しの発起人だったので、誰よりも力を入れて池をかき混ぜていました。
すると、コツンと枝先に何か当たる感触が。私はそれを手元に引き寄せようと枝を動かしましたが、次の瞬間、”がしり”と枝が掴まれ、逆に引きずり込まれてしまいました。
池の直ぐ側に立っていたものでしたから、前につんのめって落ちてしまいます。どぽんと大きな音のあとに、私の全身は水に包まれました。
春の御手洗池の冷たさを、今でも覚えています。目にも口にも鼻にも水が入ってきて、小さな体が溺れていきます。沈む瞬間になってようやく、友達が数人がかりで助けてくれました。
なんとか岸辺に寄り、体を池から地面へ上げます。私は飲んだ水を口からぺっぺっと吐き出していましたが、そんな私の姿を見る皆の顔面は蒼白です。
「ねぇ、それ……」と、指さされた自分自身の体を見ます。
全身にべったりとついていたのは、藻と、黒く細長い……女の髪の毛。
背筋が凍りつくような思いとはこのことです。私達は急いで池を離れ、水飲み場の水で体を洗ってから、走って公園より逃げました。
時刻は五時を過ぎていました。冷たい風が体を冷やし、ひどく寒かったことを覚えています。
その後私達は、池をかき混ぜていたことが地域の人から学校に連絡が行って、後日担任の先生よりしっかり怒られました。
でも不思議なことに、学校の先生は一度も、私が池に落ちたことについては触れませんでした。
私達以外に、目撃者はいたはずなのに。
それ以来、クラスの中での幽霊ブームは収まり、皆別のことに夢中になりだしました。
私が池に落ちて、髪の毛まみれになったことも、忘れられていきました。
あれは本当にあった出来事なのでしょうか、それとも……?
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