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呪い・祟り

くやりさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

白無垢に咲いた花
長編 2022/02/20 12:16 3,524view
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「私をお嫁さんにしてくださると約束したではございませんか」

花嫁が呪詛を紡ぐ間も喀血は止まらず、白無垢を赤く染めていきます。私は金縛りに遭って動けないまま目だけ動かし、血まみれの花嫁を凝視します。咳の音はどんどん弱々しく掠れていき、遂には途絶えました。

「お恨み申し上げます……」

最後に一言告げて花嫁は帰っていきました。スルスルと床を掃く白無垢の裾が退場するのを見届けた瞬間、体が楽になりました。翌朝には熱も下がってすっかり回復し、両親は胸をなでおろしました。

病気になったのは白無垢にイタズラしたからじゃないか……後ろめたさに負けて昨日の事を告白した所、両親の顔色はサッと青ざめ、大慌てて祖父を呼んできました。祖父の口からもたらされたのは、あの白無垢に纏わる哀しい過去でした。

もとよりあの白無垢は幕末の武家の娘の為に仕立てられたのだそうです。娘には格上の家柄の許嫁がおり、15の身空で嫁ぐ事が決まっていました。しかし娘が結核を患い病の床に伏せた事で縁談は白紙になり、許嫁は別の女性と結婚したそうです。恋人の心変わりを恨んだ娘は、祝言の日に備えて誂えた白無垢を纏ったまま、血を吐いて亡くなったのです。

「同じ白とはいえめでたい白無垢を死装束に選ぶとは、余程未練があったんじゃろうな。気の毒に」

娘の形見の白無垢はお焚き上げされるはずでしたが、いくら火にくべても何故か燃えず、同業者の間を回り回って最後にうちの蔵に流れ着きました。祖父は娘の供養を兼ね、丁寧に染み抜きを施した白無垢を土蔵に飾ったのです。

私が見たのは結核でこの世を去った不幸な花嫁の亡霊だったのでしょうか。

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