歩道橋の女の子

小学生の頃の話です。

当時行き帰りに使っていた通学路には歩道橋があり、子どもたちは大抵そこを渡っていました。

私も例に漏れず毎日上り下りしていたのですが……

ある時階段をのぼっていると、歩道橋の手摺から身を乗り出している女の子が目に入りました。
年の頃は4・5歳でしょうか。

危ないなあと思ったものの人見知りな為注意もできず、俯き加減に通り過ぎようとした所、女の子がくるりと振り向きました。

「今から落ちるよ、見てて」

突拍子もない発言に困惑する私をよそに、女の子は今まさに手摺を乗り越え、真下の車道へと真っ逆さまに落ちていきました。

「大変！」

咄嗟に手摺に飛び付き、女の子の死体がないのに面食らいました。
暫くそのまま呆然としていると、白髪のお婆さんが反対側の階段をのぼり、ゆっくりこっちにやってきました。

「何やってるんだ、危ないよ」
「今、幼稚園位の女の子がここから飛んだんです」

しどろもどろに説明するやお婆さんは泣き崩れ、数年前にここで無理心中が起きたと教えてくれました。

「死んだのは私の娘だ。旦那の浮気を苦にして、4歳の孫を抱いて飛び下りたのさ」

私が歩道橋で会ったのは、無理心中に巻き込まれた可哀想な女の子だったのでしょうか…