それはゆらゆらと
投稿者:piko (6)
そんな私を前に、母は鬼の形相で叱りつけます。
「何考えてんの、アンタ!簡単に死ぬな!」
どうやら母は私が自殺をしようと勘繰ったようで、未だ呼吸が整わない私に容赦なくビンタを浴びせました。
脳幹がバネのように揺れる衝撃を受けましたが、不思議と体の自由が戻り、声が出るようになりました。
「痛っ!あ、声出る」
すると、タイミングが良いのか悪いのか、父もこの騒ぎに起きたようで電気を点けて部屋に入ってきます。
「どうしたんだ、こんな夜中に」
「ちょっとあなたからも何か言ってあげてよ!この子、今、窓から飛び降りようと……!」
顔面蒼白で取り乱す母の訴えを聞いた父の表情が事態を飲み込むや否やみるみる内に険しくなり、私を睨み付けました。
そんな父の形相を見た私は、母にぶたれた頬の痛みを思い出し、同じ轍を踏まぬよう必死に誤解を解いたのでした。
「ち、違っ!気づいたら窓の前に立ってて……!それでお母さんの声で目が覚めて!飛び降りるとか、してない!」
しどろもどろでしたが、どうにか両親は半分ほど納得し、もう半分は疑念の面持ちでした。
ただ、そうなると私は寝ぼけて窓を開けて飛び降りようとしたことになるので、それはそれで両親からとても心配されました。
「もしかして受験が辛いのか?そうならちゃんと相談していいんだぞ?」
「公立に拘らなくてもいいのよ?」
等々、私が受験に疲れてことでノイローゼになったのではと、本当に心配されました。
無論、ノイローゼでもないし、受験が大変とも感じてはないのですが、ただ寝不足は間違いなかったのでそれが原因だと家族で結論付けました。
後日、父は私に夢遊病の可能性を疑い医者にかかるよう進めるのですが、本当に大丈夫だからとちゃんと睡眠時間を取ることを条件にやんわりと断りました。
ただ、睡眠時間が延びたにも関わらず、私はたまにベッドから上体だけを起こして窓の方を向いてじっとしていると、母から聞きました。
そして、母がそんな私を目撃した時、私は決まって変な夢を見ているのです。
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