親の死に目に会えない
投稿者:Kellogg (5)
俺は高校卒業後、田舎から上京し東京の大学に通ってそのまま東京で就職した。
うちの田舎は結構、高校出てから上京する人が多く、田舎暮らしより都会暮らしに憧れる人が多かった。
そんな事もあって、上京した同級生も多く、時間が会うとたまに同窓会っぽい集まりで一緒に飲みにったり近況を報告したりして、今でも交流していた。
ある時、また上京してきた同級生がいて、俺とIとTと上京してきたEの4人で飲みに行くことになった。俺たちは小学校の同級生で当時から仲が良かった。
Eは実家が板金工で家を継いていたが、お父さんが病気で家業を閉める事になり、就職先を捜す事になり上京してきたらしい。
そんな集まりで4人で飲んでいると、Iが
「そういえば小学校の時にさ、通学路の途中に古いお寺があったじゃん、そこにあった墓場を通るときに親指を隠して通らないと、親の死に目に会えないって噂があったの知ってる?」
当時、その噂は結構地元じゃ有名で墓場を通るとき俺も、親指を隠して通っていたのを覚えている。
「あれって、ただの噂でしょ俺なんか全然隠さず通っていたよ」Eがそう言うと、Tが
「俺たちまだ親生きてるでしょ、俺も隠して通ってたけど、今思えばただの迷信でしょ」
と当時子供の頃はちょっと怖い話で、有名だったけど大人になって思い返すと、確かに田舎によくある迷信の一つかとも思った。
そんな話もすぐに終わり、時間になったので飲み会はここでお開きにした。
暫くして、Eからメールが届いた。就職先が決まったらしい。元々板金の技術はあったので以外に早く決まったらしい。
下町にある、結構有名な会社で働く事になったとのこと。
それから2~3日が経ったある日、Eからまたメールが届いていた。どうやら実家のお父さんの病気が末期の癌でそろそろヤバイらしいから一回実家に帰るとの事だった。
実家に戻ったEだが、それから2日後にお父さんが亡くなったと連絡があった。家族そろって最期を看取ったらしく、それがせめてもの救いだったと。
葬儀から1週間くらい経ってから、Eがこっちに戻ってきて仕事に復帰したと連絡がきた。
暫くはバタバタしてたけど、ひと段落したんで戻ってきたらしい。俺も両親は今だ健在だけどいつかは別れの時が来るんだなとちょっと考えたりもした。
それから暫く、俺たちは連絡を取り合うこともなく日々の仕事に追われていたが、ある日の仕事終わりに携帯を見るとIから着信が届いていた。
俺はIに折り返しをすると、直ぐに電話が繋がり「Eから連絡来たか?あいつさ仕事中に裁断機の操作誤って、親指切れちゃったみたい・・」
俺はゾッとした。あの噂話を思い出した。Eは親指隠して墓場の前を通っていなかったって言ってた。
あいつ・・親の死に目には会えたけど、自分の親指なくなっちゃったんだ・・・
これが偶然かどうかは分からないけど、今考えると親指隠しておいて良かったかもと思った。
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