ウミカクシ 海上の恐怖と街の伝承
投稿者:イエティ (51)
ずっと昔、この地域には伝承があった。
子供が危険にさらされないように注意するためのいかにも作り話の伝承。に聞こえた。
「夜に遊ぶとさらわれてしまうよ。
ウリミのカクさんがさらいにくるよ。」
俺の祖母よりもっと古い時代、子供たちはそう言われて育ってきた。
ウリミってのは昔のこの地域の呼び名だった。
カクさんってのはそこに住んでた少し頭のおかしい人で、大荒れの日、無理に漁に出たきり戻ってこなかったそうだ。
ウリミのカクさんってのが徐々に変化してウミカクシになったらしい。諸説あり。
なんでケンさんはそれを詳しく知っているのにHの家族や近所の漁師は知らないのだろうか?
ケンさんが言うには、この地域でこの話はタブーらしい。
1960年代~70年代、俺がまだ生まれていない時代の話。
この伝承を調べに来たオカルト好きたちが、相次いで行方不明になったことがあった。
最初は1961年、夏。
30代~40代の5人組が、S浜の傍にある神社にかなり罰当たりな行為や、海に対してもよくない行為(賽銭泥棒とか大量のゴミの投棄など)を行ってから、夜に海に繰り出した。
漁港の隅に打ち捨てられた古い手漕ぎの和船を勝手に使い、無理やり夜の海へ。
古い船だってのもあるし、先述の通り、付近の外洋はかなり流れがきつい。
O浜-T浦間の荒さではないにしても、そんな船で外洋に出たらひとたまりもない。
結局朝方船だけが流れ着き、彼らは行方不明となった。
その後、彼らの一部と思われる足や手だけが付近の漁港で発見された。
オカルト好きの阿呆どもが漁港を、海を荒らし船を盗んだうえでの自業自得だと街のみんなは思っていた。
分かっているだけでも賽銭泥棒やゴミの投棄、もっとひどいことをしたんじゃないかと町民はそっちの方が心配だった。
漁船へのイタズラとかね。
1970年代、似たような理由で20代の若者集団が肝試しに。
夏の夜、海パン一丁でS浜から泳ぎ、カナヅチで泳げなかった一人と女性2名を残し7人が行方不明。
「楽しげに泳ぐ声が一瞬にして消えた」と言っていたらしい。
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