近づく泣き声と足音

これは数年前の冬の出来事です。

その日は主人の親戚が大勢集まり、某遊園地近くのレストランで忘年会を兼ね、皆で夕食を食べる予定になっていました。

近くが遊園地だったこともあり、我が家の子供たちは従兄弟達と乗り物にのったり、パーク内を駆け回ったり、寒い中アイスを食べたりして、朝から夕方まで楽しく遊びまわっていました。レストランへ移動してからは、他の親戚達も集まり、久しぶりに会う親族と大人も子供も食事をしながら楽しく過ごしていました。

夕飯も終わり、無事その会がお開きになった後は、そのまま主人の実家に泊まる事になっていました。
その宿泊時に起こった不思議な話です。

私も主人も子供達も疲れて居たので、その夜は割と早く布団に入っていました。私たちも主人の両親もみんなぐっすり寝入っていた頃。

遠くで幼い子供が泣いている声が聞こえるような気がして私は目を覚ましました。初めは、また自分の子供が怖い夢でも見て泣いているのかな？と思い、いつも通り、手で子供の背中をトントンしてなだめようと思いました。

ただ、その時はいつも聞こえる声の感じではなく、少し遠くから声が聞こえている気がしたので、隣に寝ている娘の状態をとりあえず確認しようと顔だけ向けてみたんです。しかし、娘は泣いていることも無く、すやすやと気持ちよさそうに寝ていたんです。

「あれ？泣き声は気のせいかな？」と、自分が寝ぼけてるんだな。と、思った私は、そのまま目をつぶってまた寝ることにしました。

が、しかし、やはり子供の泣き声が聞こえるんです。声の感じは、2～3歳くらいの子供の声のように聞こえます。

気になったので声が聞こえる方に意識をむけてみると、それはちょうど階段を降りた当たり1階の方からでした。(私たちが寝ているのは2階です。)

私の子供は隣で寝ていますし、冷静に考えてみても他に子供がそこにいるはずはありません。ましてや夜中に他人の子が玄関内に入ってくることも考えられません。

小さい子の泣き声がどこから聞こえてくるか大体想像がつき、「これは、まずいやつかも。」と思った時、同時に私の身体が急に動かなくなっていました。私は金縛りになっていたんです。(私は元々定期的に金縛りにはなるのですが、すぐおさまるものとそうではない時とあり、その時まずい。と思ったのは後者の感じがしたからです。)

金縛りになってしまうと、もうしばらくはどんなに必死に動こうとしても体は動きません。

そして、身体が動かないまま、聞こえてきた泣き声に意思をむけると、、

･･･トン。

・・・･･･トン。

と階段を1段、また1段と、上がってくるような音も同時に聞こえてきました。

「怖い！誰なの！？はやく動いて！この金縛りとけてほしい！」と、私はもがいたり、叫ぼうとしました。しかしいつも通りやっぱりなにもできず。動くのは眼球だけでした。

必死にもがこうとしている間も、

…トン…

……トン。

・・・・・・トン。

と、ゆっくりゆっくり階段をあがってくる音が聞こえますし、
泣いている声も最初に聞いた時よりも、近くに聞こえるような気もしてきました。

このまま2階までこの足音があがってきて、このままこの部屋にまでこられたら嫌だな。と見えない何かの存在にとても焦りました。しかし、回避する方法が思い浮かばなかった私は、このまま気づかない振りをして、寝てしまうのがよいと考え、動くことを諦めて目を閉じて寝てしまうことにしました。

目を閉じてそのままじっとして、しばらくすると、階段の音が消え、泣き声も聞こえなくなっていました。