事故物件”ではない”私の部屋で
投稿者:ぴ (414)
もう数年前の話なのですが、私は実家から遠く離れた土地ののアパートで暮らしていたことがありました。
性格上、なかなか仕事が長続きしないタイプで、働いては辞め、働いては辞めての繰り返しでした。
そんな自分に嫌気がさした私は仕事をなんとか続けられるようにと、周りに頼れる環境を断つことにしたのです。
実家で住んで暮らしていたら、どうしても親に甘えてしまって簡単に仕事を辞められる環境なってしまうのですよね。
それが嫌で、あえて周りに知り合いがいない県外で一人暮らしを始めて、頼れるものをすべて断ち切ったのでした。
このアパートを契約したのは、最初に入った不動産屋さんに紹介されたからです。
仕事が決まって、周辺でお家を借りようと思ったときに、おすすめのアパートがあると紹介してくれました。
立地がとてもいい代わりに、結構高級マンションが続く地区だったのですが、このアパートはお手頃な価格で住める部屋で、私は迷うことなく契約しました。
外から見た外観はやはり少し古かったのですが、内部はしっかりリフォームされていて、とてもキレイでした。おしゃれなほどよく広いお部屋で、「丁度いいな」と思って契約したのです。
その部屋で暮らし始めて、最初は何事もなく過ごしていました。
おそらく1か月くらいは特に何事も起こらず、仕事も順調でした。
一人暮らしを始めて、自炊もするようになって、自分でもすごくうまくいっているなと驚くぐらいでした。
その状況が変わり始めたのは丁度住み始めて1か月経過した頃です。
最初に感じた異変は、耳鳴りがするというものでした。
ふとした瞬間に部屋でいると、キーンと耳鳴りがしたんです。
最初は気にならない程度のもので、「疲れているのかな」と思うだけでした。
しかし、いつしか頻繁に耳鳴りがするようになって、あまりに酷いので病院などにも相談に行きました。
ただ見てもらっても、「特に不調はないです」と言われてしまいます。
そして不思議なのはその耳鳴りがするのが職場ではなく、毎回「アパートにいるときだけ」というものでした。
その日も、キーンと耳鳴りがし始めました。
「あ、また来た」と思って、げんなりしました。
でもその日はいつもと違っていて、耳鳴りと一緒にこそこそ声が話し声が聞こえたんです。
本当に耳を澄まさないと聞こえないくらいの小さな声でなんと言っているのかは聞き取れません。
ただ声は壁の向こうから聞こえてくるようでした。
当時アパートに住んでいた人は少なくて、私の両隣に住んでいる人はいませんでした。
もしかして誰かが入居してきたのかなと、耳鳴りにうんざりしながらも私はそう予測していました。
翌日、ゴミ出しに行くとき、私は自分の部屋の右隣の部屋のドアが半開きになっていることに気が付きました。
そして隙間から子供の笑い声とドタバタと走りまわるような音が聞こえてきました。
「やっぱり誰か引っ越してきたんだな」と私はそう思って何の疑問も抱きませんでした。
その日は仕事の残業で遅くに帰ってきたのですけど、隣の部屋の電気はついていないようでした。
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