子守歌が聞こえるH空港のある施設
投稿者:陶芸参謀 (37)
20歳前後だった頃、アルバイトで都内H空港内にある施設内の清掃をしていました。
土日に清掃するので、職員は警備員さん以外に誰もいません。
真冬だったのでバケツに水を入れる手が痛くて仕方がない。
重いバケツをエレベーターで3階に運び、僕はそこにある長い廊下(50mほどありました)をモップがけする仕事に没頭していました。
誰もいない廊下の一番奥から、モップで左右に拭きながら背面歩きという形で進んでいきます。
サッサッとモップを動かしていると天井から何か音が聞こえてきました。
休日なので館内放送などする人間もおらず、何事だ?と思っていました。
仕事に集中していたので最初は気にならなかったのですが、だんだん嫌な予感がしてきました。
なぜかというと、その音は「女の声」だったからです。
しゃべっている時の声ではなく、何かハミングで子守歌を歌っている感じでした。
最初はもにゃもにゃと歌っていたのですが、とうとうその声がはっきりと聞こえるようになり、しまいには僕の頭上で歌っているところまで近づいてきたのです。
うわああ!!と叫ぶようにしてモップを持って走って扉からホールに出ました。
エレベーターに乗ってみんながいるところに戻ると、警備員さんが談笑していて、「ここ出るから気をつけてね」と言っていました。
早く言ってくれよ…。と、不思議な体験をしたと同時に、安堵感を覚えました。
それから数年後、僕はある漫画を読んでいました。
ホラーギャグで有名な某先生の自伝漫画です。
その先生は僕と歳が同じで、やはり20歳前後の頃に清掃バイトをしていたそうです。
先生も清掃中に心霊現象に遭い、警備員さんに「ここ出るよ」と言われたというエピソードを漫画で描いていました。
もしかしたら僕と同じ場所で掃除をしていたのかもしれない…。
そんな風に思っています。
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