手を振る髪の長い女の子

ある晩、私は子供を迎えに神社の近くの塾にいきました。街中はまだ明るい時間ですが、神社の周りは夕方ごろには人気がなくなりしーんとしています。過去には誘拐事件や暴行事件もあったため、なるべく塾にはお迎えに行くようにしていました。

冬の寒い日だったので、あたりが暗くなるのも早い日でした。私と息子が神社の近くを通りかかると、髪の長い女の子がこちらに向かって手を振っているようでした。暗かったため表情は全く分かりませんが、息子の塾の友達かなと思いました。息子の方をみると、軽く会釈をしていたので、やっぱり塾の友達だったんだと思って、そのまま私も会釈をしてその場を離れました。

後から息子に「今の友達？」と聞くと、驚いた顔で「え？お母さんの知り合いと思ったから会釈したんだよ。」と言われました。息子の友達でなかったなら、私の知り合いだったんだろうかと思いながら帰宅しました。

次の日、息子が青ざめた顔で帰ってきました。「昨日、神社のところで手を振っていた女ん子いたよね？」と話し始めると「今日、神社のところ通ったら、昨日の女の子がいたところ、側溝になっていて人が立てる場所がないんだよ。」と泣きそうな顔で訴えました。私はその瞬間背筋が凍り付きました。確かにあの場所は、深い側溝になっていて人が立てる場所ではないのです。では、あの女の子は浮いていたということでしょうか。そして、いったい誰だったのでしょう。息子は、その話を友達にしたら、「会釈でよかったよ。手を振り返していたら、友達と思われて連れていかれていたかもよ。」と言われたそうです。