これは中学の時に、林間学校の肝試しで死にかけた話だ。
肝試しって言っても、森の中のハイキングコースを歩くだけの簡単なやつ。曲がりくねってるけど、1kmもなかったと思う。
地元では順方向、逆方向って呼んでたらしいけど、別にどっちでもいい気がした。
スタート地点の近くに集まってさ、旅館の人が取ってつけたような怪談を披露してくれたんだよ。
『このハイキングコースは夜に逆行したら死ぬ』って。加害者の霊がいて、逆行する人を見ると逃げたと思って襲ってくるらしい。『なんで加害者側なんだよ』って、みんなで笑ってた。
けど、担任の先生は「危険だから、ちゃんと話を聞け!」って怒鳴ってた。普段は温厚な先生だったから、みんなビビって静かになった。
そんなことがあったから、ただでさえ真っ暗な田舎のハイキングコースが余計に怖くなった。1班は4人で、懐中電灯は2本。俺の班は女の子ふたりとお調子者のAだった。
いちばん最後の班だった俺たちは、1時間くらい待って、担任の先生と旅館の人たちに見送られて出発した。
でも、当時の俺は臆病なくせに、普通に進むだけじゃおもしろくないと思ってしまった。だから、急に足を止めて、藪の方を照らして「……何かいる」とか言ったんだよ。何も見えてなかったけど、女の子たちは悲鳴をあげてて、めちゃくちゃおもしろかった。
で、次の瞬間、何かに足首を掴まれて俺は気を失った。
どのくらい経ったか分からなかったけど、目を覚ますと真っ暗だった。Aと女の子たちは懐中電灯を持って進んだと思ってた。
藪から音が聞こえたし、暗闇に何かが見えた気がして、あまりの怖さに目を閉じてしゃがんでた。逃げようにも、『逆行するな』って言われてたから、どっちへ進めばいいか分からなかった。
しばらくすると、担任の先生が懐中電灯を持って探しに来てくれた。先生はAから、俺が気を失ったことを知らされたと言っていた。
俺と先生がゴールにたどり着くと、俺が気絶したことは知れ渡っていて、散々からかわれたし、同じ班だった女の子たちにはめちゃくちゃ睨まれた。
先生を呼びに行ってくれたAにお礼を言おうと思って探したけど――見つからなかった。
翌朝になって、Aが行方不明になったと知らされた。
クラスメイトはみんな、怖がったり悲しんだりめちゃくちゃだったけど、先生たちは『逆行したからしかたない』みたいなことを言ってた。
夜に逆行すると危険な足場があったのかもしれないと、おとなになった今は考えるようになった。だからこそ、あれだけ強く注意されたんだと思う。
とはいえ、そんな危険な場所で肝試しをやった理由は分からない。けど、臆病が幸いして、俺は今も生きている。
Aは今も見つかっていないらしい。
























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