皆さんは、「曰(いわ)く付きの品」というものをお持ちでしょうか?
私の実家には、普段は押し入れにしまわれている傷だらけの古いクラシックギターがあり、所有者である父はそれを「猫に呪われたギター」だと主張しています。
父が小学生の頃、当時飼っていた猫が、そのクラシックギターのサウンドホール(穴)によく出入りしていたそうです。あんな狭いところによく入るなと思っていたのですが、出るときは自分では出られず、そのたびに当時の持ち主だった祖父が弦を外して助けていたそうです。
ある日、夏休みの読書感想文を書くために、図書館から宮沢賢治作品集を借りて読んでいた父は、ギターに入り込んだ猫を見て「セロ弾きのゴーシュ」という作品を思い出しました。そこで父は、何度も入り込む猫を懲らしめるためにギターを持ち上げ、でたらめに弦をかき鳴らしたのです。
ぎゃぁぁおおおおうあお!!!!
何とも名状しがたい猫の絶叫が響き渡り、中で猫が暴れだしました。驚いてギターを落とした後も、猫はギターの中で暴れまわり、弦を爪や歯で噛み切って自力で這い出てくると、今度は部屋中を暴れまわってギターと父を散々ひっかき、障子の摺りガラスを突き破って家から飛び出していきました。
騒ぎを聞きつけた家族に事情を話すと、父は激怒され、拳骨を食らったそうです。
それ以来、その猫が家に帰ってくることはありませんでした。そして、近所の猫までもが家に近寄らなくなり、外で父を見かけた途端に逃げるようになったそうです。子供の頃、私が父と出かけるとき、確かにそんな光景をよく見かけた記憶があります。
そのギターは普段、ギターケースに入れられて押し入れにしまわれており、父の数ヶ月に一度の気まぐれで取り出されては鳴らされるのですが、父が言うには、取り出すたびに傷痕が増えているようなのです。近くの神社に持って行ってお祓いをしてもらったり、修理に出して傷を塞いだりしてもらったが効果はなく、いまだに増え続けているそうです。
そう言いながら、父はその傷だらけのギターで「猫踏んじゃった」を弾き始めました。
ぎゃぁぁおおおおうあお!!!!
近所の猫らしき鳴き声が響きました。
父は肩をすくめ、「やめろってさ」と苦笑いしてギターをしまっていました。
その時から、十数年たった今も父は健在で、ギターの傷は増え続けています。


























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