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語り部のタラノメさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

古本屋のおじさんに聞いた昔話『騙るに堕ちる(仮)』
短編 2026/04/09 22:18 76view

※狭い範囲の地名が含まれる話ですので、特定を防ぐ為にこの題にしています。

『騙るに堕ちる(仮)』
今は昔、家を持たず、ただ当てもなく旅を続ける男がいた。男は貧しい身なりをしていたが、どこへ行っても物怖じせず、口八丁手八丁でその日暮らしを続けていた。
取り敢えずにと、次の町へと向かうため山を越えようとした。

しかしその前に男がたどり着いたのは、深い山の中腹にある小さな集落だった。
名前も知らぬ集落ではあったが山道で疲れた足を休ませるために一日だけ滞在することにした。
​しかし、その集落はひどく荒れていた。連日の日照りで川は干上がり、作物は枯れ、飢饉が村を襲っていたのだ。男は村の様子を見ながら、汚い宿の戸を叩いた。

​「この村は一体どうなっているんだ。腹は減るし、水はねえし。こんなところで神様も仏様もあるもんか」
​男は宿の主人の前でも平然と毒づいた。簡素な飯と、雨風しのげるだけの粗末な寝床。男はため息をつきながらも、屋根と壁があるだけましだと考え、すぐに眠りについた。

​夜中に目を覚ますと、外から微かな音が聞こえる。じめじめとした、懐かしい音だ。
男が外を見ると、なんと小糠雨がしとしとと降り始めていた。

翌朝、集落の者たちが男の宿に集まってきた。顔には憔悴の色が浮かんでいたが、その目は希望に満ちていた。
​「もしや、あなたは……」
​村の長が震える声で尋ねる。
「もしや、あなた様は、この干からびた村に恵みをもたらしてくださった、来訪神様ではございませんか!」
​長の声に、他の村人たちもざわめき立つ。
「ああ、そうだ。きっとそうに違いない。村がこんなにひどい時に、見慣れない旅人様が来て、その夜に雨が降ったなんて……」

「神様だ!神様がこの村にやってきてくださったんだ!」
​男は呆然とした。なぜこんなことになったのか、全く理解できなかった。だが、男はすぐに状況を把握した。この状況を利用すれば、この飢えた村で楽に過ごすことができる。そう考えた男は、神様として振る舞うことを決めた。

​男は静かにこう告げた。
「この村の悲惨な様子を見て、私は心を痛めました。私を敬い、私を祀りなさい。そうすれば、私はこの村に更なる恵みを与えましょう」
​村人たちは喜んで、男を村の社に迎え入れた。男は「偽物の神」として、村人から捧げられる貴重な水分である酒や数少ない食料を貪る毎日を過ごした。最初は戸惑っていた男も、次第にその立場に慣れ、村人たちに傲慢な態度を取るようになった。

​だが、雨は二度と降らなかった。
​村人たちは不安になり、男に尋ねた。
「神様、なぜ雨は降りませぬか?」
​男は苛立ち、叫んだ。
「お前たちの信心が足りぬのだ!もっと良い供物を捧げよ!」
​村人たちは、わずかに残っていた食料をすべて供物として捧げた。しかし、雨は一向に降らない。飢えは村を蝕み、やがて村人たちは一人、また一人と倒れていった。

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