俺は雪がよく降る村に家族で住んでいる。だけど、俺は雪が嫌いだ。音も無く降るその雪を見ると、また思い出す。あの、辺り一面灰色の静寂を。
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これは僕が小学三年生の時の出来事だった。その日僕は友達と一緒に雪遊びをしていた。母に「四時までには帰ってきなさい」と言われていたので、少し早いお昼頃から友達と雪で遊んでいると「お兄ちゃん、僕も混ぜて!」と弟が走ってきた。しばらく友達と一緒に遊んでいると、弟がいなくなっている事に気づいた。
僕「おーい!何処にいるんだ!」
すると、かなり離れた所で人影が走る姿が見えた。雪が降っていて見通しが悪い。僕は人影に向かって走り出した。けれども、どれだけ走っても弟には追いつかない。灰色の世界が何処までも続いているかの様に思えた。
どれだけ走っただろうか。気付くと辺りは灰色の静寂に包まれている。闇の中冷たい風が頬を掠った。その時、ふと我に返った。
僕「…何の為にこんな所まで走って来たんだろう…?」
…そうだ。当たり前かの様に接していたけど、僕に弟なんて居なかった。僕どころか、一緒に遊んでいた友達にも兄弟なんて居ない。
僕「じゃあ、あれって…」
その時、後ろから雪を踏む足音が聞こえた。それは少しずつ近づいてきて、遂に僕の真後ろにまで迫っていた。僕は悲鳴を上げるのをぐっと堪え、ゆっくりと振り返った。
「オにィちャン」
そこには、顔面が黒く落ち窪んでいる、とても人間とは言えない怪異が佇んでいた。僕は無我夢中で走って逃げた。後ろを振り向かずに、足がもげるんじゃないかと思う程全力で走って。やっと家が見えてきた。…でも、様子がおかしかった。家に灯りが付いておらず、玄関が開け放たれている。僕は玄関の前で立ち尽くしていた。
「おかえり。」
急に背後から声がした。これは父の声だった。僕は安心して振り返ったその時だった。全身に氷水を被ったかの様に鳥肌が立った。ただいま、という声を必死に堪える。そこにいたのは、父じゃなく、顔面が黒く落ち窪んでいる化け物だった。そしてここで記憶が途切れていた。
…朝、僕は玄関の前で倒れているのを家族が見つけた。どうやら、僕は数日間いなくなっていた様だった。それから、父にこんな話を聞いた。
父「…あれは『雪坊』だ。雪の降る日に遭難して亡くなった子供の魂なんだ。それで雪坊は誰かの弟になりすまし、遭難する振りをして追わせる。その後そいつの親に姿を変え「おかえり」と聞いて、「ただいま」と答えた者を道連れにするんだ。雪坊は灰色の雪が舞い散る日に現れる。俺も会った事があるんだ。だから、本当に帰ってきて良かった。」
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…俺には弟がいた。もう四十年程前のことだが。
俺「おぉ!外めっちゃ雪積もってる!」
その日は、沢山の雪が積もり辺り一面灰色で包まれていた。
弟「わあ、すごいね!」
最初は俺一人で雪遊びをしていた。
弟「お兄ちゃん、僕も混ぜて!」
遠くから弟が走って来た。
俺「うん!雪だるま作ろう!」
弟「じゃあ僕あたま作る!」
そうして、俺は弟と雪だるまを作り始めた。しばらく経って、俺は雪だるまの体が完成した。
俺「おーい!頭出来たかー?」
俺は弟がいた方向に顔を向けた。…いない。さっきまで雪だるまの頭を作っていた筈の弟が音も無く消えていた。雪のせいで音が聞こえなかったのだ。すると遠くで人影が走る姿を見つけた。きっと弟だ。俺は無我夢中で追いかけた。でも、追いつくどころか距離はどんどん離れていき、ついに人影は見えなくなった。




















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